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2010年6月27日 (日)

詩  深い海の底へ 詩集『砂時計主義』(黒川純)から

 

 「詩的生活」にはもちろん、そのものズバリ、詩が必要だ。きょうはブログ名を「砂時計の夢 夢の砂時計」に決めた理由のひとつである私の詩集『砂時計主義』(随想社・2008年5月)から、その一篇を紹介させていただく。学生時代にアルバイトで稼いだ資金で、仲間たちと伊豆七島の小さな旅に出た。そのときの光景がきっかけのひとつになって書いた詩だ。

  深い海の底へ

                黒川純 

海の青と空の青が交差する

南の海のスカイブルーの海流で

マンボーのように漂い歩けば

若い鮎の裸身が蜃気楼に映え

方角がない喫水線で眠りに落ちる 

   

身体を竜宮城へひるがえすと

次々と走る去る龍神に出会い

倒れた視界に青空しかなかった

陸上競技場の快活な心臓から

ラベンダーの香りが匂い立ち

心はミルク色の氷塊になっていた

セピア色したその残影を辿れば

夏休み日記が一行も書けない

大海原にまどろんだ午後

岬から岬を巡るつむじ風に

痩せた喉と手足を投げ出し

まぶたを水平線に重ねたとき

海神がゆっくりと招き寄せた

ダリの砂時計の力を借りたり

水平線の逆光を使ったりして

海の道に私を手招きする姿が

フィルムに感光されている

一心不乱の夕日を背にして

アサリ採りの忘れた時間に

海の向こうから かすかに届く

押し黙った貝殻たちの唄も

そのとき 聴いたかもしれない

そんな風や歌に魅せられるのは

深い深い海の底へ潜水していく

進化したクジラたちのように

私も深海のその在りかを予感し

私たちがやってきたそこに

いつか 帰ろうとしてしているからか

例えば 初夏の紫陽花に光る一滴

雨上がりの晴れ渡った緑の峠道

万華鏡に散らばった熱帯魚たち

真っ直ぐに海の道を泳ぐ抜き手

とうとうと流れ行く砂漠の大河

水の精たちはそこに向かって

太古からの新しい風に吹かれて

光が届かない深い海の底でも

受け継がれた遺伝子に導かれて

キリキリと潜っていくべきことを

ずっと 伝えているのかもしれない

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