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2010年6月12日 (土)

詩論  流れ着いた海岸の向こうへー清水昶小論ー(その1)

Dscf9254

  (詩集「朝の道」や「少年」などを収めた清水昶詩集・思潮社)

明けるのか明けぬのか

この暗闇に

だれがいったいわたしを起こした

やさしくうねる髪を夢に垂らし

ひきしまる肢体まぶしく

胎児より無心に眠っている恋人よ

ここは暗い母胎なのかも知れぬ

そんななつかしい街の腹部で

どれほど刻がたったのか

だれかがわたしを揺すり

たち去っていく跫音を聞いたが

それは

耳鳴りとなってはるかな

滝のように流れた歳月であったかも知れぬ

だれがいったいわたしを起こした

土地から生えた部族たちが旗をおしたて

村をめぐった豊年祈願の祝祭

祭りの中心で旗を支えわたしは

凶作の林道をぎらぎらめぐり

飢えの中心で旗を支えた少年の

麦のような手のそよぎであったのか

 詩人・清水昶(あきら)の詩集『朝の道』のなかのひとつ、「夏ほとりで」の前半部だ。『朝の道』は1972年出版。「夏のほとりで」は代表作品とされる。その前年の71年、大学紛争が最後の火花をあげていたころ、沖縄返還協定が焦点だった。

 衆議院沖縄特別委員会が沖縄返還協定を強行採決したのは11月17日。2日後の11月19日には新左翼各派が1万9千人を動員、都内で市街戦が行われ、約1900人の逮捕者を出している。

 この当時、私は大学3年生で、米軍というひも付きの沖縄返還に青年の正直な怒りを覚えていた。大戦末期に「鉄の暴風」の犠牲を強いられた沖縄、薩摩の圧制を受け、幕府に従い、大日本帝国の犠牲の盾になり、そしてまた冷戦下で国と国との取引材料にされていく。誇り高いかつての独立王国の嘆きが容易に推し量れるだけに、青年特有の正義感も手伝い、直接的な行動に訴えるのにそれほどのためらいはなかった。

 明けて72年の2月に連合赤軍浅間山荘事件が起きた。3月に連合赤軍メンバーのリンチ殺人事件が発覚し、新左翼運動そのものが根底から問われていくことになった。そんな時期の出版だが、私が清水昶の詩を読んだのは、現代詩文庫『清水昶集』(思潮社)が出版された73年だと思う。このとき

明けるのか明けぬのか/この暗闇に」「だれかいったい私を起こした/やさしくうねる髪を夢に垂らし」などの詩句がともかく新鮮だった。

 根本にある怒りの源から、それも叙情的にうたいあげる詩句や語法に魅せられた。沖縄返還協定批准を阻止できなかった悔み、大学闘争の挫折感やその先の展望のなさ、揺らぐ日々の生活などを抱えていた時期だっただけに、なおさらだったかもしれない。

  このときの「だれがいったいわたしを起こした」の時間性について、清水昶自身は「60年末までは学生運動の嵐が吹き荒れて、世の中は騒然としていたし、青年たちは目標を失っていた。時代そのものが、暗闇だったのだ」と説明している(『展望 現代の詩歌  3』の「清水昶」・明治書院・07年)

 私としては状況はまた違う感じがするが、60年代を同志社大学に在籍しながら、新左翼の社会主義学生同盟(社学同)、通称「関西ブンド」の一員として、過ごした、その後「行動派の政治青年は文学青年に変貌し(た)」という清水昶としては、そういことだったのだろう。

  ただ、清水昶の詩集を通して、改めて、吉本隆明(吉本隆明体験で言えば、『固有時の対話』、『転位のための十篇』などは、それ以前から驚きを受けていたが)、そして、石原吉郎、黒田喜夫、村上一郎、埴谷雄高なども親しむようになっていった。(以下、「その2」に続く)

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コメント

■小生もこの詩が好きです。「だれかいったい私を起こした」この詩句は、うすうす感じていることをずばりと言ってくれた気がしますね。

冬月さま
コメント、ありがとうございます。「だれがいったいわたしを起こした」、繰り返すそのフレーズに激動の時代に向かわねばならぬ、そう感じたことを覚えています。結語の「だれかがわたしを起こし/土砂降りの生涯の向こうに/しめやかに去っていく/気配がある」、それにさまざまな思いを抱いたことでした。

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