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2010年7月21日 (水)

花のように鳥のように 阿久悠小論ーその3-

Dscf0480 (編集後記に「歌はときに時代に先んじ、時代の根源につくものだということが、氏の作品に触れると諒解される」などと書かれている追悼アンソロジー 『阿久悠のいた時代 戦後歌謡曲史』・2007年12月・柏書房)

新聞各紙が紹介した阿久悠の代表曲は1970年代が中心だ。だが、私は「白いサンゴ礁」は別にして、むしろ90年代に入ってから、さらに2000年代の詩に魅せられている。「花束(ブーケ」(90年、八代亜紀)、「花のように 鳥のように」(94年、桂銀淑) 「花になれーうめさくらあやめあじさいひがんばな「(2004年、田川寿美)などが典型だ。

 「花束」「花のように~」の2曲は日本レコード大賞作詞賞に選ばれているのだが、それを知ったのも阿久悠が亡くなってから。阿久悠の追悼アンソロジーとなってしまった『阿久悠のいた時代 戦後歌謡曲史』をひもといてからだ。阿久悠の作品では新しい方だが、それでも6年~20年も過ぎている。 

 スナックでお客が歌うのを聞いていて、「なにか気持が動かされるいい詩だな」。そう思ってはいた。それが、高く評価されていたことがこの本でわかった。「やはり、発売当時も評価されていたのか。いい詩はいい詩なのだな」。そんな思いを抱いたことだった。そのひとつ。

花束(ブーケ) (八代亜紀 1990年 作詞・阿久悠 作曲・服部克久) 

ひとり暮らしに 慣れたのに

愛も気にせず 生きたのに

罪な心が 届けられ

わたし 女を 思い出す

こんなキザなことは

あなたに違いない

郵便受けに ブーケなんて

さして帰るなんて

何を話すつもり

あなたがわからない

死んでもいいと泣くほど

つらくさせておいて

ひとり暮らしになれたのに

愛も気にせず 生きたのに

罪な心が 届けられ

わたし 女を 思い出す

わたし 女を 思い出す

 「ぼくは演歌の中に登場し、愛されている女性が、どこか非日常の感じがして不満であったから、情感がスーツを着て、クレジットカードとマイカーの鍵とマンションの鍵を持っていると感じさせる『花束』の主人公は好きだった。罪な心が花束である。そのためにスーツの女性も揺れる」

 『歌謡曲の時代』(阿久悠 2004年)で、阿久悠は「花束」について、こう解説している。つまり、この歌は「日常的女性の演歌」だというのだ。そういうことなのだ。演歌歌手・八代亜紀が歌っているのだが、いわゆる演歌ではない演歌だと思わせるのは。都会的な演歌、いや、生身の女性の演歌、そこのマンションに暮らす女性の演歌ー。それがこの歌に魅かれる理由なのだと感じた。

 もっとも、この詩の主語は別に女性でなくともよい。男性にもあてはまると思う。微妙な心の揺れを示す状況を郵便受けと花束(ブーケ)だけを使って、伝えている。「せっかく、忘れようとしたのに」。再びどうにも思い出させられてしまう。そうした心情は、だれもが一度は同じような経験を味わっているのではないだろうか。

 そして、私がこの詩に魅せられるのは、そうした胸騒ぎを起こさせる、沈黙の胸の内を、「慣れたのに」「生きたのに」といった象徴的な短い言葉で示していること、それが大きい。そうした言葉を自然に詩の中に定着させていることに、驚きを覚える。イラク軍がクウェートに侵入し、イラク戦争が起きたこの90年に、阿久悠はこんな恋の歌をつくっていたのだ(また、「花のように鳥のように」まで辿りつけなかった。次回こそ~)。

(「花のように鳥のように 阿久悠小論ーその4-」に続く)

 

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