死んでも、思想、意思は伝わっていく 詩 ヒマワリは「星のひかり」と
磯山オサム・小詩篇からーその2- (「ヒマワリは<星のひかり>と」など磯山オサムの5篇の詩が収められている『序説第16号』・2009年5月)
詩 ヒマワリは<星のひかり>と
磯山オサム
夜を惜しんで
手を繋ぎ東方十字路を越え
大川を渡る 大川を越える
<星のひかり>
持続する夢 持続させる夢
中空の太陽
一九六七年十月九日 ぼりびあ
居場所を失った者の瞳の合図
生きて死んで越境をして
何度もこころを砕こうとする
「ヘルモンモダモノコノイノチ」
「ステルモノダモノコノイノチ」
手を繋ぎ
後ろ姿を飛び出し
サヨナラ
ヒマワリ
身を半分にして大川を
<星のひかり>と手を繋ぎ渡っていく
目をさらに開き
記憶を今に届けるために
夜を惜しみ
初出は「茨城新聞」の『茨城詩壇』(2009年4月5日)。それも含めた5篇を「ヒマワリをモチーフとした五篇」と題し、『序説第16号』(2009年5月)に掲載された(日光霧降高原の「砂時計」が事務局)。この詩が「茨城新聞」の「茨城詩壇2009年前期賞」に選ばれ、09年8月9日に掲載された。
選評(橋浦洋志)で印象的だったというか、的を得ているなと思ったのは以下の見方だ。
「行間にすき間があり、ここに心地よい飛躍が存在しています。この飛躍の方向性は、あえて言えば存在を慈しむ祈りを実現しようとするものです」「何よりも言葉が若々しく初々しいのも特徴。表現が押しつけがましくならないのは、言葉が清潔だからです。自我の濁りをできるだけぬぐい去り、ツヤのある言葉が選び取られています」
受賞した磯山オサムの「受賞者の一言」
「人は死んでも、思想、意思は伝わっていくということを大事にした。詩は開放感があり、自分を表現できる異次元の世界。これからも日常の中で大事にしたい」
磯山君本人から受賞の知らせを受けたとき、「砂時計」はびっくり。同時に考えれば、それもありかなとも思ったことだった。というのも、選評にあるようにイメージが気持よく飛躍し、選んだ言葉のひとつひとつが碧い海のようで、意表を突く言葉も定着させてしまう。さらに選者が指摘するように五月の風のような清潔感がある。
選者は、あえて触れていないのかも知れないが、さらに言えば、時代状況を(それも全共闘世代の時間や心情を)詩の中に、それとなく、あるいはあからさまに溶け込ませているところが特徴だ。もう長い友人でもあるが、「砂時計」も見習わなければならない詩人(それもさらに発展していく詩人)だと思う
(磯山オサムは茨城県笠間市在住)。
(磯山オサム・小詩篇からーその3ーに続く)
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