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2010年10月18日 (月)

華々しい意志の落ちこぼれ  茨木のり子詩集からー(4)-

Dscf4295 (詩「落ちこぼれ」が収められている『思索の淵にて 詩と哲学のデュオ』近代出版・2006年4月)

 

 「和菓子を連想するなんて、思いも寄らない」。詩と哲学のデュオ『思索の淵にて』の一方の著者、ヘーゲル学者で知られる長谷川宏の文章だ。実際、「落ちこぼれ」から「和菓子」をだれが連想しよう。

 落ちこぼれは「①落ちてちらばっているもの②あまりもの。 残り物③普通一般から取り残された人。特に授業についていけない生徒」(『広辞苑』)。少なくともプラスのイメージの言葉ではない。

 だが、茨木のり子は落ちこぼれの魅力を語り、自らも女としては落ちこぼれだと語る。最後の四行で「落ちこぼれ/結果ではなく/落ちこぼれ/華々しい意志であれ」と結ぶ。

 「思索の淵にて」の長谷川宏は「劣等感」をキイワードにして、「全共闘運動のあと、大学教師への道を自ら断って塾教師をはじめたときには、まちがいなく落ちこぼれの意識があったし、さらにいえば、落ちこぼれを楽しみたい思いがあった」とする 

 長谷川は、そこから落ちこぼれ生徒の解決法について語っていく。だが、この詩は落ちこぼれという人生を選択したときのある種の構え方をとらえたものだ。

 だから、長谷川は生徒のことではなく、落ちこぼれの意識があったという自らのことを、もっと哲学的に語るべきだった(と思う。高名なヘーゲル学者なのだから、そこを伝えて欲しいという思いからだが)

 「砂時計」も工業高校から自動車会社に就職したが、現場(試作車を一台づつ作る試作工作課)の仕事になじめず退社。工業大学に入ったものの、世の中は1970年代の騒乱期。全共闘運動にのめりこむのが自然だった。

 工業大学には6年(いや7年だったか)も在籍したが、最後は(「試験拒否闘争」などもあり~)大学除籍。まともな仕事に就けるわけもなく、落ちこぼれそのものだった。いや、落ちこぼれというより、<破滅型人生を歩んでいるな>。そんな思いでいた(詩を書き始めたのはこの頃から)。

 明日が視えないその道も自ら決めたのだから、それでも、良しとしてきた。時代の真ん中にいた全共闘運動の経験や蓄積が(いい面もいやな面も)、いずれ、どこかで役に立つだろう。

 そうした思いを抱えてはいたが、それが何になるのか。まったく定かでなかった。まして、長谷川のように落ちこぼれを楽しむというような余裕はなかった。

 だから、この詩の結びのように「落ちこぼれ/華々しい意志であれ」といった凛とした、すがすがしいものではない。しかし、落ちこぼれだからこそ、物事をラジカルに、根底的に追い求めることができる。その思いは強かった。

 その意味ではこの詩の「むざむざ食われてなるものか」ではなく、「こちらがいずれ食わせてもらう」。いつか、そうなることを変に確信していた。落ちこぼれという出来そこないは、それを自覚するゆえに、ゆっくりと、そうゆっくりとだが、美味しく育っていくのだと思う。 

 

詩 落ちこぼれ

               茨木のり子

落ちこぼれ

  和菓子の名につけたいようなやさしさ

落ちこぼれ

  いまは自嘲や出来そこないの謂

落ちこぼれないための

  ばかばかしくも切ない修行

落ちこぼれにこそ

  魅力も風合いも薫るのに

落ちこぼれの実

  いっぱい包容できるのが豊かな大地

それならお前が落ちこぼれろ

  はい 女としてはとっくに落ちこぼれ

落ちこぼれずに旨げに成って

  むざむざ食われてなるものか

落ちこぼれ

  結果ではなく

落ちこぼれ

  華々しい意志であれ

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コメント

自分を<落ちこぼれ>っと思ってみたことは無かったが、、、

よ~く考えれば<落ちこぼれ>そのものだった。笑い


<落ちこぼれ>てなかったら今頃どこで何をしてるんだろう??

エルさま
よ~く考えなくても、<落ちこぼれ>だと思います。
茨木のり子は「華々しい意志で」とありますが、
<落ちこぼれ>は気がついたら、落ちているの
ですよね。後がないから、それはそれでいいのだと。

私も「落ちこぼれ」かもしれません。
「華々しい意志」って言葉にパワーをもらえる気がします。
そう思い込んでしまおう(笑)!

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