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2010年10月17日 (日)

しい~んと静かな魔の湖  茨木のり子詩集からー(3)-

Dscf4281 (詩「みずうみ」などが収められている『茨城のりこ集 言の葉 3』・筑摩書房・2002年10月)

 

 「人間の魅力とは/たぶんその湖のあたりから/発する霧だ」。

 茨木のり子の詩「みずうみ」は、しい~んとした深く青い静かな湖を心の底に持つべきなのだ、という詩句をメインに組み立てられている。その詩の「しいん」(原文では強調点、、、が打たれている)

 その深く青い湖を「かくし持っているひとは/話すとわかる/二言 三言で」。だが、「さらさらと他人の降りてはゆけない魔の湖」だという。そして「人間の魅力とは・・・」へ。

 そのひとの深い知恵であったり、深い哀しみであったり。あるいはひとに言えぬ挫折感や恥を知る心、温かな慈愛や優しい自信など。これらを心の底に隠し持つひとは、少し話しているだけで、ほとんど感じることができる。

 この詩を読んでいたら、川端康成の『伊豆の踊子』の一場面を思い出した。下田へ向かう道すがら、踊子たちが主人公・私のことについて、語っている場面だ。

いい人ね」

「それはそう、いい人らしい」

「ほんとにいい人ね。いい人はいいね」

この物いいは単純であけっぱなしなひびきを持っていた。感情のかたむきをぽいと幼くなげだして見せた声だった。わたし自身も自分をいい人だとすなおに感じることができた。

 砂時計」は、「いい人」という評価より、「いい人はいいね」という物いいに惹かれる。いい人が悪いわけはなく、いいに決まっている。だが、この場面だと、絶対的な肯定感や安心感、信頼感がみてとれる。

 若い頃からの夢のひとつは、踊子が語るように「いい人はいいね」、そう言われてみたいということだった。残念ながら、人徳がいまいちとあって、そういう幸福な場面に会うことはなかった。

 だいたいが「自分勝手な性格だ」「猪のようなB型人間そのもの」「気遣いがほんとにない」などの評価が多い。せいぜい、中年に差しかかるときに、お年寄りの知者から「あなたは、職業そのものだね」と、しみじみと言われたぐらいだ(この場合は功罪両面の評価か?)。

 そんな悔い多い自分の過去があるので(反省しても元の場所に戻れないので、反省はしてませんが。いや、少しは反省しているかな~)、茨木のり子の「みずうみ」のような詩は、よけいに親しみを抱くのだろう。

 つまりは「いい人はいいね」と、言われるようになるには、「しい~ん」とした深くて青い魔の湖を、心の底に隠し持たねばならぬということなのだろう(念のためですが、隠し事ではないですぞ 笑い)。さぁ、わたしやあなたはどうだろう?。

詩 みずうみ

             茨木のり子

<だいたいお母さんてものわさ

しいん

としたとこがなくちゃいけないんだ>

     名台詞を聴くものかな!

ふりかえると

お下げと河童と

二つのランドセルがゆれてゆく

落葉の道

     お母さんだけとは限らない

     人間は誰でも心の底に

     しいんと静かな湖を持つべきなのだ

田沢湖のように深く青い湖を

かくし持っている人は

話すとわかる 二言 三言で

     それこそ しいんと落ち着いて

     容易に増えも減りもしない自分の湖

     さらさらと他人が降りてはゆけない魔の湖

教養や学歴とはなんの関係もないらしい

人間の魅力とは

たぶんその湖のあたりから

発する霧だ

     早くもそのことに

     気づいたらしい

     小さな

     二人の

     娘たち

     

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「しいんと静かな湖」!私の欲しいものです!
持っている人にとても惹かれます。

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