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2010年10月16日 (土)

青春は木偶の坊  茨木のり子詩集からー(2)ー

Dscf4274_2  (詩 「伝説」 現代詩文庫『茨木のり子詩集』 初版は1969年3月)

 「青春が美しいというのは伝説である」で始まる茨木のり子の詩「伝説」は、いかにも茨木のり子だと思う(代表的な詩「わたしが一番きれいだったとき」のトーンに似ている)。なにしろ、「囚われ人」「木偶の坊」ときて、「歪み」「へま」。さらに「残酷で」「恥多い」とくる。

 実際に青春は、その中にいるとき、自分を振り返ってみても、世界や社会の中の己の位置がまだ薄明かりで、大海にただ漂う小さなヨットのよう。どこかに向かう羅針盤もなく、ただ、やみくもに大波に向かおうとする無鉄砲な木偶の坊だ。

 その雰囲気というか、若者の気分が過不足なく、次々と繰り出す詩句に示される。「青春」といえば、阿久悠作詞・森田公一作詞の「青春時代」がすぐに思いつく。歌いやすい曲なのだが、なぜだか、ずっと、違和感が残っていた。

 それが茨木のり子の「伝説」を読むことで、その違和感がなんとなくわかる気がしてきた。「青春時代」のサビはこうだった。「青春時代が夢なんて/あとから思うもの/青春時代の真ん中は/胸に刺さすことばかり」

 実際の青春はもっと焦燥感や飢餓感に満ちあふれ、世界や世間の理不尽さに怒り、弾劾し、感激し、怪行し、騒乱し、そして無力感に向き合って、打ちひしがれてしまう。こころは残酷な冷凍庫のようだ。そうした気分が「青春時代」は弱い。

 さらに「伝説」には別の側面もある。短い詩句で、青春の情況も描いてみせる。「青春は/自分を探しに出る旅の 長い旅の/靴ひもを結ぶ 暗い未明のおののきだ」。私にひきつければ、そう、温かな故郷の精神史から別れ、歴史を過去へ過去へと遡る長い旅に向けた靴ひもを、ぎゅっと、結び直したのだった。

  

詩 伝説

           茨木のり子

青春が美しい というのは

伝説である

からだは日々にみずみずしく増殖するのに

こころはひどい囚れびと 木偶の坊

青春はみにくく歪み へまだらけ

ちぎっては投げ ちぎっては投げ

どれが自分かわからない

残酷で 恥多い季節

そこを通ってきた私にはよく見える

     青春は

     自分を探しに出る旅の 長い旅の

     靴ひもを結ぶ 暗い未明のおののきだ

ようやくこころが自在さを得る頃には

からだは がくりと 衰えてくる

人生の秤はいやになるほど

よくバランスがとれている

失ったものに人びとは敏感だから

思わず知らず叫んでしまう

<青か春は 美しかりし!> と

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コメント

どうして茨木さんの詩はこんなししっくりくるのでしょうか。

青春時代・・・・へまばっかりでした(笑)
思い出したくないことばかり思い出してしまう昨今です。

美しいと言うのは伝説だ!

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