詩 眼をそらさないで 現代詩人会東日本ゼミナールin岩手ー(8)-
(渡邊眞吾さんの詩「眼をそらさないで」などが掲載されている詩誌「堅香子」最新号の第7号=2010年6月、「堅香子」の会)
「日本現代詩人会東日本ゼミナールin岩手」では、「北上詩の会」の一員として、群読に参加した詩人 渡邊眞吾さんのふだんの詩は、ぜひ紹介したい詩だ。岩手県詩人クラブの前会長として力を尽くしてきたが、人柄はいたって気さくだ。その人柄と同様に、その詩はいつも温かく、なんだか懐かしさがある。
今の岩手県詩人クラブ会長の吉野重雄さんが代表を務める詩誌「堅香子(かたかご)」でも、「砂時計」は渡邊さんと同人同士。毎回、作品を楽しみにしている詩人のひとりだ。同誌では毎号とも、同人それぞれが、「いいと思う詩五篇」を編集担当に、はがきで報告している。
最新号・第7号でも、「砂時計」も五篇を選んで送ったが、その第一番に渡邊眞吾さんの詩「眼をそらさないで」を選んだ。「東日本ゼミナール」の休憩で、「おひさしぶりです」と、渡邊さんに声をかけると、「そういえば、あなたでしたか」。もう何年も岩手に顔を出していないが、なんとか、思いだしてくれたようだった。(詩人たちの懇親会で語り合う渡邊眞吾さん・写真左=9月18日、岩手県北上市内のホテル)
その渡邊さんが会長だったときに発刊したのが岩手県詩人クラブ50周年記念の『岩手の詩』。なにしろ、1000ページを超える本で、厚さが約6センチもある代物。その「刊行にあたって」で、当時の渡邊会長は、こう書いている。
本県出身の国民的詩人に啄木と賢治がおります。その後も多くの優れた詩人を出していますが、「岩手の詩」の編集を進めるにあたり、特に啄木、賢治の眼に見えない励ましがあったように思います
詩といい、詩人といい、世間的には、なんだが、現実離れしたもののように思われてしまう(「砂時計」は、もともと性格そのものが、現実離れしていると、若い頃からいわれてきたが~苦笑い)。だが、東北、それも岩手では、詩が非常に日常化している。あるいは生活や市民の中にある、そう言ってもいいかもしれない。
(渡邊眞吾さんが岩手県詩人クラブ会長だった2005年2月に発刊された岩手県詩人クラブ結成50周年記念の『岩手の詩』。なんと1087ページもある)
「啄木、賢治の眼に見えない励まし」。渡邊さんは、そう書いているが、その啄木、賢治を生んだ「風土」が関東などと違うのではないか。日光霧降高原に暮らしている「砂時計」は、いつもそう感じている(その「風土」とは・・・となると、長くなるので、略~実際は、うまく伝えられないので~)。
ただ、ひとつ言えるのは、北上市とお隣の花巻市だけでも、「日本現代詩歌文学館」はもちろん、「サトーハチロー記念館」、「宮沢賢治記念館」、「宮沢賢治イーハトーブ館」、「宮沢賢治イーハトーブセンター」、「高村光太郎記念館」などがある。
詩 眼をそらさないで
渡邊眞吾
まわりに弱い人がいる
弱い人を包んで生きている
陽が昇る 陽が沈む
ささやかな今日がある
人は一人では生きてゆけない
おだやかな明日があればいい
言葉や手で呼びかける
あなたの瞳に明りが灯る
望みはそれだけ
なのに なぜ?
戦火と飢餓におびえる瞳
非情と孤独にふるえる瞳
空と海と森にくるまれた
水晶体の地球が焼けただれる
戦争の歴史は
450万年のなかの8000年
宿命ではない 人間の知恵で
共生の時代は戻って来る
眼をそらさないで
(「東日本ゼミナールin岩手ー(9)-」に続く)
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コメント
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Thanks for the info
投稿: zerodtkjoe | 2010年10月20日 (水) 20時09分