すくすく育つ土壌がどんどん悪くなってゆく 詩 「キャベツ」
(まな板の上でキャベツと包丁が出会う あたりまえか~=24日、日光霧降高原の「砂時計」宅)
詩 キャベツ
黒川 純
包丁がキャベツの上に落ちても
キャベツが包丁の上に落ちても
どっちの場面であっても
結果を引きうけるのは
キャベツの俺たちなのだ
包丁が落ちるかもしれない
飛んでくるのではないか
そう思わないでもなかったが
まさか 本当に飛んでくるとは
それもたくさんの包丁が
一丁でも それはすごい衝撃だ
それが次々と丘陵を飛び越して
キャベツ畑を荒らしてしまったのに
北の農家はこう強弁するんだ
「うちの畑の回りをウロウロするから 断固たる措置をとった」
こんなことは土地の縄張りを決めた
半世紀以上前の1953年以来だ
怒りに怒った南の農家もすぐさま
「数倍の包丁で対応してやれ」と
正義はこっちだ 互いに胸を張って
ギラギラした包丁をもてあそぶのは
キャベツの俺たちにとっては
どっちにしても大きなお世話なのだ
わかっていないのかもしれない
こんなことを繰り返していくと
若いキャベツがすくすく育つ土壌が
どんどん悪くなってゆくのが
(初出は季刊詩誌『新・現代詩 22号』2006年9月 詩「メロン」 今回の「キャベツ」は、この詩の変形型)
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