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2010年12月15日 (水)

「化外」から紡ぐ風土の精神(下)  「斎藤彰吾 詩論・エッセー集」解説-黒川純ー

Dscf5297 (斎藤彰吾さんが代表のひとりを務める「全国生活語詩の会」編集の「現代生活語・ロマン詩選」・竹林館・2008年12月)

「斎藤彰吾 詩論・エッセー集」(コールサック社 2011年春・刊行予定)

栞解説      黒川純

「化外」から紡ぐ風土の精神 (下)

2 イーハトーブの詩人たち

 現代の暴挙である米軍のイラク戦争にも、敏感に反応した数少ない詩人のひとりが彰吾さんだ。この戦争に怒る「平和と春一番を呼ぶ会」が北上川河畔の展勝地レストハウスで開かれたのは2003年冬だった。そのとき、私は思わず走り書きのようにして書いていた詩「怒りの苦さまた青さ」のメモを手に会場に向かった。

 詩らしきものを書いたのは、学生時代以来、およそ30年ぶり。そのとき彰吾さんにおだてられたのがきっかけになり、「北上詩の会」や「岩手県詩人クラブ」、岩手県の詩人を中心にした詩誌「堅香子」(かたかご)の会員や同人になることになった(一時期だが、季刊詩誌「新・現代詩」の同人同士にも)。いわば私にとって、彰吾さんは詩の世界の水先案内人のようなものだ。

 そうこうするうちに「朝日新聞岩手版で戦後の岩手県の詩人たちを紹介してみたらどうか」。その名前も「風土」という北上市内の居酒屋さんで飲んでいた最中だと思うが、彰吾さんに持ちかけた。その当時、彰吾さんが戦後間もなく「岩手県詩人クラブ」の設立に強くかかわっていたことも知り始めたときだ。

 主題を「イーハトーブの詩人たち」と決め、各回ともテーマ主義でいくことにした。掲載は毎月2回、計13回(2004年春~秋)。とりあげる詩は現役の詩人に限ることにしたのが特徴かもしれない。そのテーマから岩手の詩の今がよくわかるはずだった。

 初回の「抒情に地の匂い立つ」に始まり、「大地から湧く農の声」「時代へと響く方言詩」へ。「風土に吹く縄文の風」「古代への記憶を刻む」など。前出の小原麗子の「十七歳」などのほか、相澤史郎、城戸朱里、岩田宏ら全国で活躍する岩手県にゆかりがある詩人もとりあげられた。
 

 そのうち岩手県宮古詩人クラブ・グループ「風」の詩をとりあげた「浜に吹く女の反戦歌」では、最初の読者である私も新鮮な驚きを覚えた。その詩、「伝えたいこと」(本堂裕美子)の4連目はこうだった。

 今も、砲弾が鳴り響く地では/花が咲くより容易に人が死ぬ/鳥の声はぜず子供が泣いている/どんな大義もあの子の涙より軽いのに

 連載中に知人から「元気をもらった」といいメールが届いたのを機に、私も紙面の「記者メール」という小欄で、この詩を改めて紹介したほどだった。


新聞記者をしながら、詩を書き始めた私にとっては、意義のある仕事として、毎回、緊張しながらだが、楽しく仕事をさせていただいた。自分が最初の読者である、こうした企画を組めたことは記者冥利でもあった。

 だが、当の彰吾さんは大変だったと思う。その思いは今回の論考「まことの言葉の姿へーイーハトーブの詩人たちー」でみることができる。

 私も直接、聞いたことがあるが、彰吾さんが心がけていたことのひとつは「作品には、一、二行だけでいい、読者の今の胸中をゆすぶる詩句を提供したかった」ということだった。「そんな気持ちだけが、やたらに働いていたと思う」とも書いている。私にとってよかったのは、彰吾さんがこの連載について、「私にとっては、ある種の社会参加だった」と、思っていてくれたことだ。

 こうした「仕事上」の交友も含めて、詩の先輩・後輩とさせていただいた。そのため、厚かましくも私の第一詩集『怒りの苦さまた青さ 詩論「反戦詩」とその世界』(2004年9月)に「哀しみを抱き未来までへー黒川純の詩についてー」の小論をお願いした。
 この小論も今回の論考にあるが、彰吾さんの「反戦の詩を書く行為」についての構えは、一朝一夕で生まれたものではないことが、わかるだろう。

 「反戦の詩を書く行為は、鉢巻きを締めて書くことではない。ごく当たり前な一人の人間として、『不都合なことは不都合だ』と、つまりご飯を食べるように書くことだ。巧く書くとかを求めず、今日のうちに消えてしまってもよろしいと、人びとの表情に告げる二言、三言を書くのみである。千人であれ一人であれ、読まれて個々の胸内に明かりがともる。それがこの国をつくる未来までへの、われらの任務であり希望ではないか」(「哀しみを抱き、未来までへ」)

 斎藤彰吾は「化外」の思想を根っ子に東北の風土にすっくと立ち続け、『化外』や『北天塾』などの発行に立ち会い、今、「全国生活詩の会」編集委員会代表の一人として、方言詩、生活詩に力を尽くしている。さらに『別冊おなご』(麗ら舎読書会、年1回刊)に「戦争を読む」を長期連載するといった作業も続けている。それでいて、ときに野田宇太郎生誕祭献詩第一席に選ばれる魅力的な抒情詩も生み出してもいる。

 これらの仕事を背景に生み出された今回のさまざまな論考は、戦後から現代を見据える拠点としてきた「化外」の思想、あるいはバルバロイ(異民族)の視点から、中央にモノ申すことに恐れない反骨のパトスのなせるものだと思う。

 「われらの任務と希望」を呼びかけた真摯な強い意志は、そうした斎藤彰吾のそれまで積み上げた結晶が呼びかけさせたものだ。「化外」から紡いできた風土の詩人の自負でもあるが、その指摘は反骨の詩人たちに対する大きな励ましにもなっている。
                                             (了)

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