心は大浴場でワイシャツになる 黒川純・詩「真っ白いラジオ」
(「真っ白いラジオ」の元になった「素敵な周波数へ」も掲載されている詩誌「堅香子 第4号」・2008年12月)
詩 真っ白いラジオ
黒川純
この先の
いつか どこか
何かいいことがありそうだ、
うしれい予感が届く素敵なラジオがある
長い旅から戻った人類と
長い旅に出る人類が山彦を返し
地球の裏側の情報を交換する
そんな不思議なラジオだ。
秒針が狂うのも気にせず
未来の時間から飛んで
夢みるように生と死を往復してゆけば
その周波数が視えるはずだ
はじめは騒々しいとしか思えない
世界中からやってくる雑音に
いつか あなたの声も重なり
透明な音色に変わってゆくだろう
どんな方法で聴けるか、だって?
霧が舞い降りる満月の晩に
年輪を刻んだカウンターがあり
お月様がのぞけるそのテラスへ
月光をさかなにゆっくりと杯を重ね
頬づえをついた身体を溶け込ませ
たくさんの忘れ物を忘れることができれば
いつか 心は青い宇宙の大浴場へ
洗濯シャボンは使わないのに
そうとは だれも気づかず
お互いに洗いあっているうちに
心は真っ白いワイシャツになる
詩「真っ白いラジオ」は、詩「素敵な周波数へ」を改稿したものだ。「素敵な~」は岩手県の詩人を中心とした詩誌『堅香子』の第4号(2008年12月)に私が寄稿した詩だ。
再び、この詩にかかわったのは、詩の題材となった日光霧降高原の「幾何楽堂」が併設している「月夜見照らす」のイベント、「観月祭ー満月に着物で楽しむ夕べー」がきょう、21日夜あるためだ。
「観月祭」は満月の夜だけに開かれる交流の場(空間使用料一人1000円)。ここでお月さまを眺めながら、一杯を重ね(かなり重ねてしまうが~)、交友をしてゆこうというイベント。知っている人も知らない人も、ここでは一緒に時間の流れを楽しんでいる。
<さぁ、きょうは一杯を楽しんでこようかな>。そう思っていたところ、どうしたわけか、「素敵な周波数」のことを思い出した。読んでいたら、どうも、まだらっこしい。昨日と同じく、自然と手を入れていた。
すでにこのブログ「砂時計主義」でも、半年前の6月19日にアップしているが、かなり改稿したので、新しい詩「真っ白いラジオ」として、再びアップへ。
<手を抜いているのではないか>、という苦情がでそうですが~笑い~(そうではないのですよ、自然に最初の詩に手が入ってしまったのです)。元の「素敵な周波数へ」を、半分ぐらいの長さにしたことで、かなりすっきりした詩になったと(私だけでしょうが~)思っています、うん。
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