「現代詩のアテルイ」が詩論集 斎藤彰吾「真なるバルバロイの詩想」
(北上の詩人 斎藤彰吾さんの最新詩論集『真なるバルバロイの詩想』コールサック社)
詩の世界の私の水先案内人である岩手県北上市の詩人、斎藤彰吾さん(1932年~)の詩論集『真なるバルバロイの詩想ーーー北上からの文化史的証言(1953~2010)』(コールサック社 初版2011年3月8日 本体2000円)が、本日23日、日光霧降高原の砂時計宅に届いた。
戦後すぐから直近まで半世紀余にわたる彰吾さんの膨大な論考を集めた詩論集。2段組みで383頁もある大著だ。全八章は以下のようだ。
一章・出発点と賢治・ハチロー 二章・北上の詩文化 三章・イーハトーブの詩人たち(朝日新聞岩手版連載) 四章・生活語詩へ 五章・北上を読む 六章・さまざまな文化論 七章・ミュージック・プロムナード 八章・書評。
さらに、この詩論集の編集者で小熊秀雄賞詩人、佐相憲一さんや三浦茂男さん(画文家)、和賀篤子さん(地方史研究家)、高橋昭八郎さん(ヴィジュアル・ポエット)、それに私・黒川純ら5人の解説もある。
その詩論集の帯に私が寄稿した解説の一部が使われている。「黒川さんの解説の一部を帯に使わせてもらいますよ」。コールサック社から、そんな連絡は受けていたが、実際に手元にするのは初めて。斎藤さんの詩論集だが、お役に立てたことも含めて、我がことのようにうれしい。
「戦後から現代を見据える拠点としてきた『化外』の思想、あるいはバルバロイ(異民族)の視点から、中央にモノ申すことを恐れない反骨のパトスのなせるものだと思う。『化外』から紡いてきた風土の詩人の自負でもあるが、その指摘は反骨の詩人たちに対する大きな励ましにもなっている」
(うれしいことに斎藤彰吾詩論集のオビに私が寄稿した解説の一部が使われた)
私の解説の題は「『化外』から紡ぐ風土の精神』だが、編集を担当した佐相憲一さんの解説「現代詩のアテルイが放つ北上の詩想」が、ずっしりと読み応えがある。というか、その解説を読むだけで、この詩論集の核がわかる、ていねいで的を得た解説だ。
佐相さんが、「現代詩のアテルイ 斎藤彰吾氏の詩論集」と紹介する、その解説を斜め読みするだけで、この詩論集を読みたくなる(それほど佐相さんが読み込んで解説を書いていることがよくわかる内容だ)。
「この本を読めば、心の景色は北上。劇薬が心地よく効いてきて、詩作品と詩運動、詩文化と歴史風土、逆転の発想と積極的な行動、地域文化と民衆の輪、戦争批判と世の中への提言、さまざまな文化論、などを内包する壮大な詩想に読み手の心も解放されるようである」
「真なるバルバロイの詩想。それはきっと二十一世紀の進歩の方向。原始古代から現代を通って人類が詩的に見つけた共生の願い。それを二十世紀から書いてきた斎藤彰吾氏に敬意を表する。この貴重な本が、北上の地域文化社会でも、日本の現代詩の世界でも、これからの文化文学一般の場でも、広く生かされることを願っている」
そうそう、著者・斎藤彰吾さんのあとがき「あとがきにかえて ちょっと長いノート」を紹介しないと、いけない(その一部だが~)。私もきょう初めて読む「あとがき」だ。戦後をきちんと生きてきた彰吾さんの親しみやすい謙虚な人柄も浮かび上がるかのようだ(以下はその「あとがき」)。
「時・人・場がその人間を鍛えてくれる。時には浪花節めいて発生する出会いでありめぐりあいである。高校時代の文芸の仲間、市役所・図書館の同僚や読書会を含む地元の人たち、ジャズ喫茶<山小屋>はマチという劇場の砦だった。各紙誌への発表の機会を作ってくれた関係者たち、北上詩の会、岩手県詩人クラや各地の詩歌人の面々、日本こどもの本研究会の方々、遠くへ行ってもう会えない先輩たち、いちいち固有名詞をあげないが、思えば多くの人々との出会いがあった。この雑文集は、そうした人々とのめぐりあいの報告書とも言うべきものなのかもしれない。東北の小さな町で、戦後の飢えと混乱の中を、辛うじて生きて来た者の『記録』にほかならない」
『真なるバルバロイの詩想』(斎藤彰吾)
発行所 株式会社コールサック社
2011年3月8日初版発行
編集 鈴木比佐雄 佐相憲一
発行者 鈴木比佐雄
定価 本体2000円プラス税
〒173-0004 東京都板橋区板橋2-63-4-509
企画・編集室 209
☎ 03・5944・3258 fax 03・5944・3238
郵便振替 00180-4-741802
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