凍土から言葉を掘り出せ 大震災詩(1))・黒川純
(日光霧降高原はこの時期、いつものように緑の季節へ=2日、砂時計のベランダから)
日光霧降高原はいよいよ、緑の季節の入り口に立った。一日一日と木々の葉が緑色を増し、葉っぱそのものに育っていく。その写真をアップしたくて、きょうはパチリ。
といっても、本題は別。昨日に続いて、ツイッターとブログの連携で。昨夜はツイッター(140字制限)で大震災に絡む詩を6篇、つぶやいた、とういうか、つぶやいていた。
題名はとくに付けずにツイートしたのだが、それをブログ「砂時計主義」へ。詩の題名はこのブログで初めてつけた。いずれも書いた詩の言葉から。大震災小詩篇(1)といったところか。
そのけなげな表情を
私は忘れないだろう/哀しみでもない/悲しむでもない/肩を落とすでもない/不満というのでもない/訴ったえるでもない/責任を問うでもない/怒るでもない/頼るわけでもない/でも/私の視点をぐらぐらと揺らし/ざわめきを呼び出し/先が視えない暮らしを/頬を伝わる涙で伝える/そのけなげな表情を
凍土から言葉を掘り出せ
ほんとうのことを語ると/世界が凍ってしまう/ある詩人が書いたことがある/だが/3・11でほんとうのことが噴出し/世界はそのまま凍ってしまったのだ/いや言葉が凍ってしまったのだ/この世界のほんとうのことを/見せられてしまったわたしやあなたは/言葉を掘り出さねばならない/その凍土から
もともとの根源へ
私は敬遠していた/嘘っぽい、まじかよ/とても身に着くものじゃない/いや、偽善ではないかとも/羞恥心さえ覚えていた/反論できない倫理というものだから/愛や優しさ、勇気、思いやり/つまりは誠実さってやつに/だが/今はそれが否応にも必要とされる/そのもともとの根源へ/次元を超えた大震災で/私自身も救われるために
沈黙だけが許される
舗装が激しくめくられ/意味を失ったプラットホーム/土に埋もれた乾いた鉄路/その先にどこまでも瓦礫、瓦礫、瓦礫/かつてそこにあったのか/傾いたコンクリートが駅舎だという/それでようやく知ることができた/姿を失った市街地はかなり先にある/沈黙だけが許されるだろう/陸前高田竹駒駅
差し出して寄り添う
カッパ姿の背中をさしだす/風呂から、台所から/庭先から、居間から/泥をかきだす泥バスターズ/それでも大潮で再び水浸しに/そこに住むことが 暮らすことが/再びかなうのか 心配なのだが/私たちはそこに手を差し出し/寄り添うのだ/あなたが再び立ち上がれるよう/わたしも歩んでいけるよう
海であり土であり空であり
私たちを想い出せ、忘れるてくれるな/いつもあなたのそばに立っていたのに/知らぬふりをされていた/もうわかっただろうか/しかし/これほどの嘆きを/これほどの哀しみを/今は悔いるしかない/百万匹の弔いをした/青空をふいにふさがれた/これまで呼ばれていた/海であり土であり空であり
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