悲しみの底から 大震災詩(10)・黒川純
(下野新聞6月6日付「しもつけ文芸」に掲載された私の詩「そのけなげな表情を」(選・山本十四尾さん)
悲しみの底から
その街は悲しみの底に
嘆きの底にあるから
悲しみの底に降りてゆき
真っ白いつるべで
嘆きをくみだして
悲しみを冷やし
優しい誠の光を
手渡しにゆこう
悲しみの底に漂い
嘆きを背負いながら
明日がすくえないひとたちに
勇気の輝きが少しでも増すように
いつか
見違えるほどの
明るい光が
悲しみと嘆きの底から
視上げられるように
大震災で壊滅状態になった陸前高田市の詩人から9日、手紙が私に届いた。私が贈った「コールサック 69号」の「震災・原発特集」の巻頭詩(かな?)になった「ほんとうのことに向き合わねば」(黒川純)について書いてあった。
「この詩にどんなに励まされたか知れません。今でも疲れはて、寝込みたくなります。そんな時、『はすにかまえた誠実さに/命を吹き込み/ほんとうのことに向きあわねば』と出てきます。機会をつくり高田の人達にもぜひ紹介したいです」
この詩人は岩手県の詩人を中心にした詩誌「堅香子」(かたかご)の同人。私もその同人で、同人同士ということもあろうが、過分な読み方をしていただいた。
その手紙では「陸前高田は悲しみの底です」「私も私なりに悲しみの底に手をついて水を飲ませる人になりたい」とあった。その「悲しみの底」という言葉に、私はその言葉の重さに打たれた。その言葉を頼りに、昨夜、うたったのが「悲しみの底から」だ。
そのけなげな表情を
私は忘れないだろう
哀しみでもない
悲しむでもない
肩を落とすでもない
不満というのでもない
責任を問うわけでもない
訴ったえるでもない
怒るわけでもない
頼るわけでもない
でも
私の視点をぐらぐらと揺らし
ざわめきを呼び出し
先が視えない暮らしを
頬を伝わる涙で伝える
そのけなげな表情を
一方、「そのけなげな表情を」は、地元紙・下野新聞の「しもつけ文芸」に投稿した詩。毎週月曜日の紙面で、読者が投稿した「短歌」「俳句「川柳」「詩」から、選者が選んで、掲載している。詩は毎回3篇が選ばれているようだ。
かなり以前に投稿したので、忘れていたのだが、6日、紙面を開いていたら、「黒川純」(日光)の名が。詩「そのけなげな表情を」が載っていた。私は35年間も新聞記者として、記事を書き続けてきたが(10年間は事件記者ひとすじだった)、自分の詩が新聞に掲載されたのは、これが初めて。
すでに昨日のツイッターでつぶやいているが、紙面をブログに紹介しながら、この詩も再載することに。このように新聞にツイッターの140字詩が掲載されるというのは、いいことだと思う。ネットの世界と新聞の世界が融合することで、互いの有効さを共有できるから。
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