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2011年10月19日 (水)

けれど私たちはふたたび旅だとうとしているー詩「潮」 詩人・河津聖恵の世界(22)

P1130412 (ご自身の詩を朗読する京都の詩人、河津聖恵さん=1日、JR日光駅ホワイトルーム)

(レッドガーランドの「GROOVY」)

 「『ひとりびとりの死者』へ、『ひとりびとりの生者』から」を演題にした京都の詩人、河津聖恵さんの詩の講演会・朗読会(1日、JR日光駅ホワイトルーム)の第二部にあたる朗読会で、読まれた詩は7篇。一方、用意していた詩は10篇。3篇は時間の都合で読むことができなかった。

 読まれなかった当日の幻?の詩のひとつが詩「潮」。河津さんの詩集『青の太陽』(2004年、思潮社)に収められている一篇だ。「私たちは哀しむことのできる塒を探している」。こんな魅力的な詩句で始まるその詩「潮」のBGMはレッドガーランドの名演奏で知られる「GROOVY」を用意していた。

 詩のトーンに比べ、このジャズでは少し明るすぎる気がしていたが、音をかなり絞れば、この詩にも合うのではないか?。と思って、当日の未明に選んだものだった。その夜、会場で披露できなかった朗読詩をこのブログで再現してみようと思う。BGMとのセットの朗読詩ということでは、初公開?ということになる。

 「私たちは哀しむことのできる塒を探している」もそうだが、この詩には「けれど私たちはふたたび旅だとうとしている」、あるいは「分からなくなった孤独のかたちがある」「今この世界に固有の哀しみはどんな色をしているだろう」など、いくつもの魅力的なフレーズにあふれている。

 詩の講演会・朗読会のテーマは「震災と原発」。河津さんにはテーマのそのものズバリの詩も最初に読んでいただいた。が、この詩「潮」は2004年につくられたものだが、「哀しみ」をキイワードにしながらも、「そこへ行こう そこへ」と、かすかな光も語られる。

 私からすれば、東日本大震災の膨大な死者たちに贈りたい歌のひとつはこれだー。そのように思え、今回の朗読詩のひとつにしていただきたい、そのように河津さんに依頼したのだった。

      

                河津聖恵

私たちは哀しむことのできる塒を探している

どこへいってもかまわない

そのように橙の光と菫色のざわめきの煮くずれる

ゆうぐれの駅舎の電光掲示板に

地名は番線ごと水のようにあらわれては吸われてゆく

居並ぶアルファベットの一つ一つは

よわよわしい世界のメタファーだ

目的地とは断片にすぎないだろう

けれど私たちはふたたび旅だとうとしている

哀しみがまだどのように可能で

どんな草いきれや土のざらつきで証されるのか

確かめるために

いつからか途方もなく突っ伏してみたいと思っていたのだ

                                                       

分からなくなった孤独のかたちがある

今この世界に固有の哀しみはどんな色をしているだろう

それらの象りのために

月と夜を生みだす露まじりの冷たい砂が必要だ

きっとその土地で疲れてたおれる私たちのからだから

涙ではない虫の体液がながれ

竜舌蘭の匂いがし

死者のような叡智もめざめるだろう

私たちはなにを哀しんでいるのか 哀しんできたか

哀しむべきで 哀しみむうるのか

たどりついた風の中でなにものかが教えてくれるだろう

                                                     

私たちは哀しむことのできる塒を探している

DUBLIN BAGDAD KABUL TOKYO

どんな駅の名をつげても係の女は無言でチケットをちぎる

世界にはまだそんな力がのこされ

私たちをふたたび乱暴に励ましてくれる

そこへ行こう そこへ

風の中からなにものかの唾液がたらされ

答えのかたちで砂がもりあがり

ムーンフラワーがいっせいに揺らめくところ

感情のない大きな翡翠の眼がおちてゆく太陽をとかし

まなざしの行方から夜をゆっくりとよびよせるところ

(4連 5連 略)

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