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2012年5月10日 (木)

説得力ある山本義隆の脱原発論  鬼っ子の同人誌「あとがき」で強調 

 6月30日の発刊をめざしている戦後の鬼っ子たちの同人誌『序説 第19号』の編集作業のヤマ場が昨夜、ようやく終えた。1年に一回、この時期に発刊、その事務局をわたしが務めている。

 今回の執筆は同人の半数の6人。いつもよりやや少ない。内容はエッセイ、詩だが、いずれもそれぞれに「あとがき」も頼んでいる。近況など原稿用紙1~2枚をというのが、注文。その「あとがき」だけの同人も一人おり、計7人が第19号に寄稿した。

 出版社は宇都宮市の「随想舎」。同人の原稿はすでに出稿済みで、最後に残ったのが、事務局のわたしだった~。9日までにこの1年のうちに各詩誌などに発表してきた詩10篇(いずれも原発震災詩))を送った。

 残るは「あとがき」だが、書き始めたら、1~2枚では足らない。最終的に原稿用紙8枚ほどに。「長~いあとがき」になってしまった。それを送ったのが9日深夜。書いたのはやはり脱原発に関して。ひと足早く、それをブログにアップすることに(以下は『序説 第19号』用のわたしの「あとがき」だ)。

Dscn3323_2 (『序説 第19号』は6月30日発刊。写真は昨夏発刊した第18号表紙)

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 「3・11」以後、本の読み方、というか、手にとる本の種類がそれまでとまるっきり変わってしまった。大震災に関するものも読んではきたが、昨夏から読む本の大半は「原発本」になっている。核と放射能の技術、科学史、反原発史、原発事故隠し、政治的思惑、被曝労働と原発訴訟、放射能汚染、とくに内部被曝と、さまざまな分野にわたり、それぞれを交差させないと、「なるほどな」「そうなのか」と思える地点に届かない。核エネルギーの分野がこれほど奥の深いものとは思ってもみなかった。それが正直な感想だ。

 読んだ本を積んである書棚から手にとってみるだけでも、以下がある。広瀬隆『第二のフクシマ、日本滅亡』、広瀬隆・明石昇二郎『原発の闇を暴く』、樋口健二『闇に消される原発労働者』、高木仁三郎『原発事故はなぜくりかえすのか』、肥田舜太郎・鎌仲ひとみ『内部被曝の脅威』、武田邦彦『放射能列島 日本でこれから起きること』、大澤真幸『夢よりも深い覚醒へ』、菅谷昭『これから100年 放射能と付き合うために』

 

 小出裕章『小出裕章が答える原発と放射能』、松井英介『見えない恐怖 放射線内部被曝』、朝日新聞特別報道部『プロメテウスの罠』、肥田舜太郎『広島の消えた日』、宮台真治・飯田哲也『原発社会からの離脱』、高橋哲哉『犠牲のシステム 福島・沖縄』、絓秀実『反原発の思想史』―(このうちの何冊かはTWITTERや私のブログ「砂時計主義」でも紹介してもいる)。

 小出さん、広瀬さん、武田さん、肥田さん、高木さん、飯田さんらは、それぞれ現代日本で脱原発派を代表する論客(もっとも小出さんは脱原発派ではなく反原発派、高木さんは故人だが)。これらから、驚いたり、怒ったり、考えたり。それらから学んだうえで、私がこの間、最も感銘を受けたのは山本義隆の『福島の原発事故をめぐって いくつか学び考えたこと』(みすず書房 第一刷2011年8月25日)だ。

 著者略歴では「学校法人駿台予備学校勤務」とだけあるが、知っている人は知っている、あの東大全共闘議長。たまたまだが、この本と前後して大仏次郎賞を受賞したヤマモトヨシタカの『磁力と重力の発見』(3巻本)、その前段を展開している『16世紀文化革命』(2巻本)を読んでもいた。

 偶然だが、この『福島の原発事故・・・』の強い読後感が残っていた昨年(2011年)11月5日、岩手県北上市の日本現代詩歌文学館で開かれた集いのパネルトークにパネラーのひとりとして招かれた。「輝け9条! みちのくのつどい」(「九条の会」アピールに賛同する詩人の輪・実行委員会主催)。プログラムの「大震災のこと、平和憲法のこと」についての論議だ。パネラーに北上市の詩人で私の年上の詩友でもある斉藤彰吾さん、石巻市の詩人で弁護士のみちのく赤鬼人さん、それに私の3人。司会役は詩誌「コールサック」編集者で詩人の佐相憲一さん。

 そのパネルトークの会場に私はメモ的なレジュメ3枚を携えていったが、そのメモの最後(「資料10」として)に山本義隆のこの本『福島の原発事故・・・』の文章を抜き出していった。「とするならば、脱原発・反原発は、同時に脱原爆・反原爆でなければならないと言えよう。・・・核兵器保有の潜在的能力を高めなければならないという岸(岸信介元総理)の倒錯した論理を、原発とともに過去のものとしなければならないであろう」。そうしたことを岩手県など東北を中心に参加した会場の詩人たちに伝えようと思ったからだ。

 だが、山本義隆のこの本に感銘を受けたのは、「物理教育にはしくれにかかわり科学史に首を突っ込んできたわたし(山本義隆)」の原発に対する以下などの真摯な見方からだ。

 その指摘は自動車や飛行機などの事故と原発事故を同列に論じ、原発廃炉を主張するなら、なぜ自動車や飛行機を止めると言わないのか、結局、人間・人類は科学の進展を押しとどめることはできないのだ、というおよそ考えられない論理ならぬ論理を持ち出す人々に対する痛烈な、そして根底的な批判になっている。残念ながら、私が学生時代から畏敬してきた詩人、思想家・吉本隆明も含まれている。かのリュウメイでさえ、こうした科学信仰病にかかっていたのだ。いや、東工大出身であったリュウメイだからこそではなかったか。吉本の原発推進発言を知ったとき、最初は「ウソだろう」と驚いたが、今、思うと、そういうことだろう。

 この本『福島の原発事故・・・』から任意に抜き出してみただけでもそうしたお門違いの見方に対する論理的でも倫理的でもある指摘を示すことができる。少し長いが、大事なところなので、お読みいただきたい。

 「原発事故を蒸気機関の創生期にあったような事故と同レベルに捉えることは根本的に誤っている。原発以外では、事故の影響は時間的・空間的にある程度限られていて、事故のリスクはその技術の直接の受益者とその周辺が負うことになる。それに対して原発では、事故の影響は、空間的には一国内にすら止まらず、なんの恩恵をも受けていない地域や外国の人たちにさえ及び、時間的には、その受益者の世代だけでなくはるか後の世代もが被害を蒙る。実際に福島の事故では、周囲何キロかは今後何世代にもわたって人間の立ち入りを拒むスポットとなるであろう」

 さらに、この本の以下の文章も深くうなづくことができる。

 「それでも原発はやめなければならないと思っている。事故のもたらす被害があまりにも大きいだけではない。いずれウラン資源も枯渇するであろう。しかしその間に、地球の大気と海洋そして大地を放射性物質で汚染し、何世代・何十世代も後の日本人に、いや人類に、何万年も毒性を失わない大量の廃棄物、そして人の近づくことのできないいくつもの廃炉跡、さらには半径何キロ圏にもわたって人間の生活を拒むことになる事故の跡地、などを残す権利はわれわれにはない。そのようなものを後世に押し付けるということは、端的に子孫にたいする犯罪である」

 原発は想像を超えた事故の過酷さはもちろん、採掘から稼働へ至る被曝労働者を生み出し、放射性廃棄物を処理することもかなわない。高橋哲哉ふうに言えば、「犠牲のシステム」そのもので成り立っている。そのうえ、子孫、はるか未来(それも「10万年後」というような、人類が生き残っているかどうかもわからない気の遠くなる未来)への犯罪に手を染めるシステムなのだ。ドイツが脱原発を決めたのも、こうした倫理感からの判断が大きく働いたという。

 負の連鎖にまみれた原発(福島第一の4基の廃炉が決まり、現在五十基)をいかに廃炉にしてゆくか。そのためのさまざまな手段や行動(例えば、わたしはデモ、集会、署名、映画会、講演会、陳情、放射能計測などにかかわっているが)をとらざるをえない。原発について知れば知るほど、その思いをますます強くしている

 短い「あとがき」にするつもりが、書いているうちに少し長くなってしまった。このようなエッセイ的な文章を書いたのも、こうした見方が、原発に対する根底的な批判が、わたしが詩を書こうとするときのバック、大きな動機にもなっている。それも伝えたかったかもしれない。「ほんとうに怒ったときにしか詩は書かない」。詩人、金子光晴がそう語ったとされるが、結果的に今のわたしはそれに近い。

 

 今号では大震災について、初めて意識した「鎮魂詩」も書いているが、最近の気分はいかに「原発主義」を凍らせることができるか、そのことに思いをめぐらせてもいる。名古屋コーチン一羽を育て、今年も春から青空古本屋「砂時計主義」を出店させつつ、初めて「市民農園」2区画を借りて野菜づくりに取り組もうとしている5月初旬に。(黒川純)

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