「3・11」から1年3ケ月のこの日に 鎮魂詩「三陸の海の底で」黒川純
;「3・11」から1年と3カ月になった。その鎮魂詩も掲載した「別冊 おなご 30号」が届いたので、それを掲載することに。わたしとしては初めて意識して書いた鎮魂詩だ。詩そのものは、今春に送っている。が、編集作業が遅れたことで、冊子発行はこの6月になってしまったという。
「別冊 おなご」は、岩手県北上市の詩人、小原麗子さんが主宰する「麗ら舎読書会」が毎年発行している冊子。岩手県を中心とした詩人たちが寄稿している。わたしもその仲間の一人だ。読書会は「千三忌」を催しており、麗子さんは太平洋戦争で犠牲になった千三さんの「墓守」を自任している。
ブログランキング
鎮魂詩 三陸の海の底で
黒川純
そのとき語っていたこと
語りたかったこと
語ろうとしたこと
語るべきだったこと
もう語るにも語れないでいる
悔みだけが人生だとしても
準備する時間がなさすぎた
わたしのあなた あなたのわたし
どうしたらその声が届くのだろうか
大蛇のような大波に流されて巻きこまれ
引き込まれて落ちながら海原に押し出された
2011年3月11日のそのとき
ひとりびとりの犠牲者にあしたがあったのに
だれも視たことがない大波に引き裂かれ
手も足も
眼も耳も
口さえも縛られた
だから
幻聴のように響いてくるのか
歴史がやってきた一瞬の悔みを伝えて
だれかが そう問いかけるのだ
いや
だれかではない
海底の光と影の境界で漂っているあなたが
わたしやわたしたちに向かって
ざわざわと
そう ざわざわと
古代がめくれあがった冷たい海底から
もう取り戻せない悔みを取り返したい
ほんとうの死者になりきれない
夢の中であなたがそうささやいたから
理不尽な哀しみの海に降りてゆき
涙で視えない瞳をそっと閉じてやり
漂う身体にじっと光の焦点を当ててやろう
眩しい輝きが海底から海面を突き破り
たなびく雲にその姿が乱反射する
もくもくと立ち上るその雲をスクリーンに
生きていればいつか願いがかなったときの
あなたが満面の微笑みで登場する
そんなことを夢想したい
そのとき
あなたは一瞬だけ
瞳いっぱいの涙を
ぽろぽろと溶かすかもしれない
あなたをさらった潮の流れで
今はただキラキラとあくまで蒼く輝く
三陸の海の底で
« 苦笑い交え、じっくりと核・放射能問題を語る 鎌仲ひとみ監督の日光記念講演 | トップページ | 完成を祝い合い、「輪」になって踊り合った 被災者の寄合場「歌津迎賓館」(下) »
「大震災」カテゴリの記事
- あの日から5年 東日本大震災 「霧降文庫」でスタート(2016.03.05)
- 雑巾、雑巾、雑巾の「床下」へ 日光市災害支援ボランティアセンター(2015.09.15)
- 届いた秋を美味しく 陸前高田の詩友から秋刀魚たちが(2013.09.14)
- 「『コミュニティFM日光』に向けて」第一回懇話会 話題さまざまに日光霧降高原・砂時計家で(2013.04.28)
- 完成を祝い合い、「輪」になって踊り合った 被災者の寄合場「歌津迎賓館」(下)(2012.06.13)
« 苦笑い交え、じっくりと核・放射能問題を語る 鎌仲ひとみ監督の日光記念講演 | トップページ | 完成を祝い合い、「輪」になって踊り合った 被災者の寄合場「歌津迎賓館」(下) »
コメント