詩 <痛い風景>をフライパンで炒める 詩誌「死と思想」7月号
詩と思想」7月号作品
〈痛い風景をフライパンで炒める
黒川 純
「私たちはこう訴えたいのです
二荒山神社前でただじっと黙ったまま
家路途中の足元を揺らすスローガン
足早に過ぎてゆく赤いハイヒール
階段を転げ落ちる乳母車が見え隠れする
角度が異なる瞳が交差点の夜空に浮かぶ
風景が濡れた路上で痛がっている
「プライバシーでその数は言えない
飛び散ったそれを無生物だと言い張った
その会社の出先の責任者が声高に
何かを知られる警戒感だけが先に立ち
矛盾を語り合う倫理はどこ吹く風だ
伸びる電線はどこまでも並行線のまま
風景の「原子力帝国」がまだ漂っている
「首都の公園の大集会へぜひ」
ネットの世界で繰り返される
響き合う深夜のツィートとシェア
そんなことより明日のホームパーティ
ほかにも町の市場にお祭り広場ー
ここにある幸せをともだちと味わいたい
風景はこの優しい地方でも何重にも
風景が鬼ごっこのように遠ざかり
その背中を回転ドアで追いかける
万華鏡の風景 風景の胸騒ぎ
散らばったそれらが手術台に向かい
こわばった顔たちに麻酔剤を打たれようと
きょうも美味しいカレーをつくるため
私は痛い風景をフライパンで炒める
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