「ことのは姫」など短編がいいー 近藤ようこ『鬼にもらった女』
近藤ようこは私の好きなコミック作家のひとり。なかでも中世ものは、まず外れがない。この「鬼にもらった女」もそうだ。中篇と短編の10の物語で編まれている。表題作は中篇だが、読み終えると、短編のほうが印象深い。
「福の神」や「夜の市」がそうだが、最初に登場する「ことのは姫」は、しっとりと読ませる。何かで読んだ記憶がー、と思っていたら、山本周五郎の時代物で、こんなハッピーエンドの物語があったような思いがー。
わずか8頁だが、中世、SF、時間、姫と少年、転落と成功、どんでん返しなどー。それらが優しい独特な絵柄で描かれている。近藤ようこがこんな魅力的な短編を描いていたとは、ついぞ、知らなかったー~。
あらすじは、こうだー。
一生に一度だけ家のためになる「予言」をすることだけが役目の姫、この姫は「よい予言」をするまでは外に出してもらえない。そこへ親を亡くして下男として働くことになった少年が。
少年はひょんなことで姫に外の様子を話し聞かせる。姫は少年を気に入り、「ずっといっしょにいるのよ、いいわね!」「もちろん、ずっとお仕えします」。そんな会話が。
だが、少年は姫と親しくなったことをとがめられ、追放されてしまう。その10年後、館は没落、姫の行く先は尼寺しかないだろうー。その場面で館を買った陸奥の商人が登場する。その商人は実はあのとき追放された少年だった。
結びの会話はこのように。
「もしや 蛍丸・・・?」
「はい、陸奥に渡って懸命に働き、この館を買うことができました」
「おまえがーーー」
「一生お仕えすると約束しましたから」
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