その結果はどこへ行き着いたか・・・ 社説余摘「指から漏れる・・・」
きょう24日の朝日新聞でとくに印象に残った記事がこれだ。見出しだけでは何の話?ー。読み進めていくと、今の情況そのものにがっぷり四つの記事だった。以下に朝日デシタルからの全文を掲載(私朝日デジタル読者です、毎月1000円ー)。
それにしても、「言論の自由は、あらゆる批判精神は・・・」。これをかみしめなければならない、その現況にあるのは確かだろう。それくらい、かなりまずい場面にいるということを胸にたたみこんでいかないとー。
目に映る話は大きくないかもしれない。けれど、その底流にこそ目を凝らしたい。 自民党がテレビ朝日とNHKの幹部を呼び出したこと。 福島瑞穂参院議員の「戦争法案」との国会発言に、自民党が修正を求めたこと。 7年前、89歳で亡くなった評論家、加藤周一の言葉を思い出す。
――二・二六事件以後真珠湾までの東京。日常の生活に大きな変化はなかった。衣食は足り、電車は動き、六大学野球のリーグ戦もあった。 「その背景の見えないところで、どういう圧力や取引や『自己規制』が言論機関に作用していたかは、当時の私には知る由もなかった。しかし報道言論の表面にあらわれた変化、一見おだやかな、なしくずしの変化に、特定の方向のあることだけは、私にも見誤りようがなかった」 もちろん戦前と今は違う。 大日本帝国憲法が「法律の範囲内」でしか認めなかった言論の自由は今、日本国憲法によって保障されている。 戦争の宣伝に加担した戦時の放送への反省から、「放送の自律」を保障した放送法もある。 ただ、私たちの言論の自由は、私たち自身が勝ち得たとばかりは言えない。
「戦後の革命的な空気のなかで、上から与えられたもので、水が海綿をつたってゆくように下からのぼっていったものとはいい難い」
1956年、当時の朝日新聞論説主幹、笠信太郎が記した言葉だ。 私たちの言論の自由に命を与えるには、報道機関も、政治権力も、細心の注意とたゆまぬ努力が欠かせない。 報道機関に求められるのは圧力に屈せず、事実に厳密な姿勢を貫くことだ。 権力に求められるのは「放送の自律」を踏み越えない自制であり、福島氏の発言について言えば異なる意見を尊重する態度だ。 そしてひとりひとりの国民には、報道機関と権力を厳しく見張っていただきたい。 異論や批判を排除せず、むしろ敬意を示す。そんな多様性ある社会こそが、健全な民主主義を育むことができる。
「真珠湾まで」を振り返る加藤の言葉に返りたい。
「言論の自由は、そしてあらゆる批判精神は、指の間から漏れる白砂のように、静かに、音もなく、しかし確実に、失われつつあったのである。その結果がどこへ行き着いたかは、いうまでもない」
(えむらじゅんいちろう 政治社説担当)
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