これでは「原発回帰」だろう エネルギーミックス案は撤回を
策定に向けた意見
2015年7月1日
〒321-1421 栃木県日光市所野所野1541-2546
電話 0288-25-3348
「さよなら原発!日光の会」
代表 富岡 洋一郎
意見の趣旨
1 2030年度における電源構成のうち、原子力発電の割合は、20~22%としているが、福島第一原発事故を教訓に、今回のような原子力発電重視の発想を撤回すべきである。原発再稼動や原発新設・増設などは行わず、現状の原子力発電比率ゼロ、原発依存度ゼロの社会を維持すべきてある。
2 2030年度における電源構成のうち、再生可能エネルギーの割合は22~24%としているが、福島第一原発事故の教訓から脱原発を決定したドイツの2030年の目標は50%である。そのドイツを見習い、省エネルギーの積極的な推進と再生可能エネルギーの大胆な導入を推し進めるべきである。
3 意見の趣旨、1及び2の理由から、今回の長期エネルギー需給見通し案は、ただちに撤回すべきである。
意見の理由
これから15年後、2030年度の電気をどうまかなうかという政府の電源構成(エネルギーミックス)案は、原子力発電の割合を20~22%、再生可能エネルギーの割合を22~24%としています。しかし、原子炉等規制法で、原発の寿命は40年に制限されており、これに従えば、2030年度の原発比率は15%以下にしかなりません。とすると、同案の考えは、すでにある原発の運転を60年まで延長させるか、新設・増設などを前提にしなければ、成り立たない代物です。
原発は空間的にも時間的にも次元が異なる高リスクを伴うことは、今回の福島第一原発事故で悲しいかな、明らかにされました。低コストであると強調されていたコストについても、政策費用や事故費用といった社会的費用を加えると、「原発はまったく経済的ではありません」(大島堅一・立命館大学教授)。むしろ、高コストなのが原発である、そのことは今や社会的な常識になっています。
そんな原発が世間に歓迎されるはずもなく、実際、原発再稼動について、国民の大多数は望んでおりません。そのことは各種の世論調査でも明らかになっています。また、国内では現在、原発依存度ゼロの状態が続いており、せめてもの安心材料になっています。つまり、原発の存在は今や社会的にも経済的にも否定されているのが実状です。
原発全廃の決定を下したドイツのメルケル首相は今春の来日時、「私の考えを変えたのは福島の事故でした。私たちが現実に起こりうるとは思えないリスクがあることがわかりました。だからこそ、脱原発の決定を下したのです」と、日本政府の方針に苦言を示しました。実際、ドイツは最後の原発を2022年に停止する方針です。また、2014年でも28%に達している再生可能エネルギーについて、2030年では50%を目標にしています。
日本でも2030年に国内で導入できる太陽光や風力など再生可能エネルギー設備は、最大で現状の4倍、全発電量に占める電源割合の35%に達するという試算を今春、環境省が公表しています。雇用拡大など大きな波及効果もあるそんな試算がありながら、今回のエネルギーミックス案の再生可能エネルギーの割合はドイツの目標の半分以下ではありませんか。
今回の案は、原子炉の老朽化による危険性を顧みず、市民の命を軽視し、「さよなら原発」の世論をまったく無視したうえ、福島第一原発事故の教訓から学ぼうとしない姿勢を示したものに他ありません。原発の「安全神話」が崩壊したにもかかわらず、マイナス面が鮮明になった原発社会に戻ろうとする方針案です。いわば、「原発回帰」の宣言をすることに等しく、出発点において誤った考え方です。
私たちは、原発の稼働年数延長による老朽化リスクを背負ってまで、原発比率を20%以上に維持するという方針案に正当性を見いだすことはまったくできません。現状の「原発比率ゼロ」を維持しながら、省エネルギーの推進と再生可能エネルギーの大胆な導入を進めることこそ、採り入れるべき方針であるはずです。
以上の理由によって、今回のエネルギーミックス案については、パブリックコメントを契機に、ただちに撤回するよう求めます。
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