東日本大震災や原発事故を機に ロケットストーブの夢
私の「ともだち」である、朝日新聞の斎藤健一郎記者が、また面白い記事を。「土管を再生、ロケットストーブの夢 49歳脱サラ起業」という記事だ。私も個人的に関心があり、FACEBOOKでは「ロケットストーブ」のグループに入って少し経つところ。いずれ、脱原発市民団体「さよなら原発!日光の会」の自主講座でロケットストーブづくりをやったらいいのではないか?とも。なので、斎藤記者の記事をそのまま掲載することにー。こんなことはめったにないのだが、非常にためになるので。
ドラマ「下町ロケット」が人気を博したこの冬、愛知県常滑市にも「ロケット」に情熱を注ぎ続ける男がいた。大企業を辞めて生み出したのは、役割を終え、放置されていた常滑焼の土管を使う「ロケットストーブ」。男もストーブも、熱く燃えている。
ゴーッ。縦にした常滑焼の土管から、熱風が噴き出す。くべた廃材が勢い良く燃え、上昇気流が起こす音からロケットストーブと呼ばれる。鍋を置けば煮炊きができ、網を置けばサンマもイモも焼ける。
一斗缶やペール缶を燃焼筒にするのが一般的だが、この「とこなめ土管ロケットストーブ」は常滑焼の土管を使う。「保温効果と断熱効果が抜群」。開発した同県大府市の金田寿正(かなだとしまさ)さん(49)は自信を見せる。
東証1部上場のデンソー(本社・愛知県刈谷市)の営業マンだった。東京勤めのころ東日本大震災があった。無力感にさいなまれながら見るテレビの向こう、東北の被災地で雪が舞う。一斗缶に廃材を放り込み、火の前で手をこすり合わせる人の姿があった。
その頃、ロケットストーブの存在を知る。手作りできて灯油も電気もいらず、調理もできる。だが、構造が単純なだけに最適な燃焼効率を得るのは難しい。学生時代に物理を学んだ金田さんは研究にのめり込んだ。
まもなく愛知に転勤。故郷の大府周辺の駐車場や空き地に転がる常滑焼の土管が目についた。蓄熱性、耐火性が高そうだ。ロケットストーブの燃焼筒に使えないか――。常滑市の窯元を一軒一軒回り、敷地内で野ざらしになっていた「過去の遺産」を買い集めた。
実験を重ねた。土管は火に直接かけると割れるので、内側に断熱材を入れた。長すぎても太すぎてもうまく燃えない。断熱材の素材、土管の長さ、太さを幾度も変えて試した。
50歳の節目を前に去年5月、26年間務めたデンソーを退職。家族は反対した。「不安はいっぱい。でも退路は断ちました」。災害で電気もガスも失われた時、ロケットストーブが多くの人の力になると信じた。
去年秋、3年かけて納得の形にたどり着いた。高さ72センチ、直径25センチの重厚なあめ色ボディー。燃焼効率が良く、ほとんど煙が出ないため、店頭でバーベキューに使う飲食店や、境内で落ち葉を焼く東京の寺からも注文が入る。ただ、重くて持ち運びにくく、価格も4万8千円と安くはない。
土管での試行錯誤を生かし、鋼の薄い板を使う約5キロの携帯型も開発。価格は1万6800円からにした。環境に優しい製品に贈られる去年のロハスデザイン大賞にも選ばれた。
ロケット発射時のかけ声にちなみ、金田さんは代表を務める工房を「LIFTOFF」(リフトフ)と名付けた。発射は成功。「一家に一台」の夢に向け、飛び続ける。(斎藤健一郎)
◇
〈ロケットストーブ〉 まきストーブの一種で米国が発祥。高温になった燃焼筒内に上昇気流が生まれ、勢い良く熱気を吸い上げる。従来のまきストーブより燃焼効率が良く、廃材や枯れ木も燃料になる。身近な素材で作れることもあり、東日本大震災や原発事故を機に関心が高まった。
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