二つの「緊急事態宣言」の中で 武藤類子
新型コロナ感染拡大という事態は、すでに「原子力緊急事態宣言」が発令されたままの福島にもうひとつの「緊急事態宣言」を重ねることとなった。それは原発事故を経験した被害者にとって、当時の多くのことを想起させる。外には出ない、マスクをする、必死で情報を探す、迫り来る不安と闘う。コロナ感染が広まった初期の頃は心的な抑圧がとても大きかった。
でも、次第に「原発事故」と「コロナ感染拡大」は、共通のことと違うことがあるのに気がついた。政府は人々がパニックを起こすのではないか、と恐れ真実を隠す、検査をなるべくやらず正確な罹患者を明らかにせず矮小化する、場当たり的な施策で最も弱いものたちが犠牲になる、専門家の意見が政治の力で曲げられる、惨事を利用した便乗型の資本主義が利権を求めて台頭するなどが共通する点だ。
違うところは、感染拡大のスピードが速く被害が分かりやすい。コロナ禍の当事者は日本全体であり、圧倒的に多い、突然の休校要請や検察庁法改正案の時のように、政府が法と権限を無視し、強行することへの国民の抗議が大きく現れてきたことだ。
武藤類子(福島原発告訴団 団長)「とめよう!東海第二原発 首都圏連絡会」会報第4号(2020年6月)「二つの『緊急事態宣言』の中で私たちが生き延びるのは『真実を知り、助け合う』こと」
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