5回目の検査で「甲状腺がん」のケースも 5・13第11回総会記念白石草さん講演会報告
5・13「さよなら原発!日光の会」第11回総会記念講演会
「福島第一原発事故から12年 3・11後の健康をどう守るか」
4回の検査とも「問題なし」が、5回目で「甲状腺がん」のケースも
日光市中央公民館中ホールの会場はいっぱいの77人が参加。
「さよなら原発!日光の会」第11回総会記念講演会は5月13日(土)午後3時から日光市中央公民館中ホールを会場に「福島第一原発事故から12年 3・11後の健康をどう守るか!」と題して開かれました。講師はチェルノブイリ、フクシマの取材経験が豊富でインターネット放送局「Our Planet―TV」代表のジャーナリスト・白石草(はじめ)さん。前売り券700円、当日券1,000円(障がい者500円)の有料講演会でしたが、会場は宇都宮や鹿沼、那須塩原からの参加者も加わった77人でいっぱいになり、補助椅子も出すほどでした。
音声で「3・11子ども甲状腺がん裁判」の原告の意見陳述も
講演は甲状腺がんにかかったのは、福島第一原発事故が原因だとして、事故当時、福島県で暮らしていた7人の若者が東京電力を相手に損害賠償請求訴訟を起こした「3・11子ども甲状腺がん裁判」を中心に展開されました(会場で「3・11子ども甲状腺裁判」のリーフレットと同裁判のニュースレター4号、5号の3点を配布しました)。用意されたスライドは70枚以上もあり、そのままだと3時間以上になる内容ですが、それを1時間10分に圧縮。それも途中で甲状腺検査や摘出手術の動画や「甲状腺がん裁判」の原告の意見陳述の生々しい音声でわかりやすく伝える手法がとられました。これに30分の質疑応答が加わる豊かな内容となったことで、講演会アンケートでも「すごくよかった」という高い評価が圧倒的でした。
子どもの甲状腺がんがわからなければほかの病気がわかるわけがない
白石さんはチェルノブイリ原発事故で現地の取材を3度にわたってしてきたことを伝え、その成果のひとつとして書き上げた「ルポ チェルノブイリ 28年目の子どもたち ウクライナの取り組みに学ぶ」(岩波ブックレット)を示しながら、YouTubeでも
チェックできることを紹介。「国際機関が理由は原発事故だと認めているのは小児甲状腺がんのみなのはどうしてなのか?」。これについてウクライナ放射線医学研究センター責任者の返答を伝えながら、「小児甲状腺がん問題がわからなければ、ほかの健康被害がわかるわけがない。そのため、2015年から必死になって調べてきた」と、最初にこの問題に特に取り組んできた動機について語りました。白石さんがどうして甲状腺がん問題に特に首を突っ込んできたのか、それがこの動機の説明で「そういうことだったのか」と。
甲状腺がん再発、肺にも転移し、大学を止めざるを得なくなった原告
「3・11子ども甲状腺がん裁判」の原告は最初6人だったが、さらに1人が加わり7人。講演によると、3・11当時、原告たちは小さい子で幼稚園の年長組、大きい子で高校一年生だった。7人のうち3人は甲状腺片葉切除、4人は甲状腺を全摘している。
このうち一人は手術を4回経験、うち一人は再発がわかり、今秋から来年に3回目の手術を受ける見込み。別の一人は肺に転移しなかなか治療のめどが立っていない。4人は放射性ヨウ素の入ったカプセルを飲んで、がん細胞を内部被曝させるアイソトープ治療も受けているという。
こんな状況から白石さんは「甲状腺がんはよくかんたんな病気で病気の経過がいいといわれるが、私が見ていると、そうは思えない」と話しました。
そのうえで甲状腺がんが再発し、しかも肺に転移したこともわかり、大学を止めざるを得なかった女性の「原告2さん」が法廷で述べた意見陳述を紹介しました。意見陳述は17分間あり、その内容の厳しさもあり、参加者はじっと耳を傾けました。
意見陳述の結びで「原告2さん」は体調不調についてこう陳述していました。「体調もどんどん悪くなっていて、肩こり、手足が痺れやすい、腰痛があり、すぐ疲れてしまします。薬が多いせいか、動悸や一瞬、息がつまったような感覚に襲われることもあります。また手術をした首の前辺りがつりやすくなり、つると痛みが治まるまでじっと耐えなければなりません」。
福島の検査では前回は9割が「問題ない」だったのに今回は
白石さんは「甲状腺検査はすごく大切だということです」と話し、その理由としてがんの進行が早い点を挙げました。子ども甲状腺がん裁判の原告の中には3回も4回も手術を受けている子がいることを伝えました。その根拠として、福島県の甲状腺検査2巡目で甲状腺がんと診断された71人の子どもたちの事例を示しました。
この子たちの前回検査はどういう結果であったか。公表されているデータによると、しこりがあり、がんの可能性があったのはわずか7%だった。それに対し、基本的に問題ないということだったのは90%だった。「それも全くきれいで健康そのものですよという子はなんと46%もいたのです」。
この場合の典型例として「子ども甲状腺裁判」で追加提訴した「原告7さん」の女の子の事例を挙げました。彼女は1回目、2回目、3回目、4回目の検査とも「問題なし」だった。たまたま5回目を受けたら、「がんです。即座に手術を受けてください」と言われたといいます。
甲状腺がんが早めに見つかった人の方が治療の効果がある
結びで白石さんは甲状腺がんが社会的な圧力があり、封印される傾向にあることを指摘。「3・11子ども甲状腺がん裁判」の原告たちがそれぞれ意見陳述したが、「それまで自分の苦しみを話していなかった。親を心配させないように振る舞い、自分の苦しみ全部封印してきた。それを吐き出した陳述を通して自分に打ち勝つ経験をして、今は少しずつ強くなっている」と話しました。
最後にこの日の講演は甲状腺がん問題のみだったが、それについては、甲状腺がんは検査もされ、人数もわかっており、わかりやすいからだと。「もしかしたら、ほかの病気でもこういうことが起きているかもしれない」とも伝えました。さらにウクライナではチェルノブイリ原発事故から30年経ってもきちんとした健康診断が続けられていることを引き合いに、日光市の甲状腺検査状況に触れながらこう強調しました。
「はっきり言って、早めに見つかった子の方が治療の効果がいいです。遅く見つかった子は肺に転移したり、全摘手術をしたり、甲状腺がんがすごく進行しています。本来なら早めに見つけるべきです」。
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