タイムリーな「エネルギー危機と原発回帰」 再生可能エネルギー状況がとくに読ませる
タイム
リーな新刊を一気に読んだ。『徹底解説 エネルギー危機と原発回帰』(NHK出版新書 7月10日発刊)。NHKラジオの解説コーナーでエネルギー問題を担当している水野倫之(のりゆき)さんと山崎叔行(としゆき)さん、それにゲストのご存じ池上彰(あきら)さんの著書とあって今の最前線情報を知ることができた。ただし、「NHK」だけに脱原発でも原発推進でもないという優等生的立場で書いているがー。それでも原発GX法の問題点を的確に指摘する一方、ウクライナ戦争で明らかになった標的のしての原発も素直にその危惧を強調している。どこかの国と関係が悪化し、東日本、西日本の原発がひとつづつ攻撃を受ければ、「国土のほとんどを使えなくなるということになりはしないか」と。プーチンのウクライナ戦争で今や普通の市民が感じているだろう不安感をそのまま伝えてもいる。また核のゴミ捨て場についてのフィンランドやスウェーデンの取り組み状況をわかりやすく紹介。印象的だったのは、再生可能エネルギーの現状と今後について。とくにその潜在力について。地熱はアメリカ、インドネシアに次いで世界第3位の資源量を持っている。波のエネルギーだけでも国内総発電量の3分の1にのぼる。森林資源にも恵まれ、「決して資源小国ではない、見方を変えれば、資源大国とさえ言える。要はどう実用化するかだ」と。秋田県沖で始まった大規模な洋上風力発電は当然、紹介されるが、私も初めて知った先端的な波力発電の興味深い試みも伝える。核燃サイクルとプルトニュームと核開発の三大話も取り上げられているが、奥歯にものがはさまった言い方までしかできないところにやや不満が残るところ。それでも全体的に今の原発政策に批判的なトーンで語られている。「原発回帰」という大転換政策を走ろうとする現状の原発問題を全体的に理解するのは手っ取り早い良書だと思う。
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