「古山元一等兵殿の忌憚のない叱責をー」 互いに認め合っていた古山高麗雄と吉田満
「わたしは、古山元一等兵殿の忌憚のない𠮟責を、半ば被告席にすえられた気持ちで読み進むほかなかった」。この戦争短編小説集の芥川賞作品「プレオー8の夜明け」の著者である古山高麗雄(こまお)(1920ー2002)の論に「戦艦大和ノ最期」で知られる吉田満(1923ー1997)がそう語っていたとは。そして、古山も同じことを思っていたという。片や旧制3高中退の落伍兵のような一等兵だった古山、片やエリート学徒兵の吉田。徹底的に戦時中でも醒めた姿勢で東南アジア各地を転戦した古山、沖縄特攻の大和艦内の若き将校たちの思考を透徹した見方で描いた吉田ー。色合いのまったく違うその二人が吉田が勤務していた日銀内で会い、互いに著書を贈り合っていたことなどを知った。このくだりには私も〈なるほどー〉と、納得することしきり。それにしても16の短編からなる528ページの「プレオー8の夜明け」(サイゴン中央刑務所中庭8号室)、久しぶりにじっくりと。とくに「戦争中、国民は皆、天皇陛下のために命を捨てた、などと言うが、ごく一握りの人たちのほかは、それは掛け声でしかなかった。違った声を出すことができなかっただけである」(「戦友」)といった古山の見方や考え方がいかにまともであるが、浅学非才にして、ようやくそんな戦争小説作家を知ることとなった。
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