読み応えある緊張感みなぎる焦点の全7章 「なぜ日本は原発を止めれれないのか?」(文春新書)
「忘れてはならない。人々の犠牲のうえに原発は動いている。原発を動かす決定をした人たちは、被曝せず、原発から遠く離れた東京・永田町にいる」。「あとがき」にあたる「おわりに」で、こう結んでいる。
薪づくりでストップしていた「なぜ日本は原発を止められないのか?」(青木美希 文春新書 287ページ)を完読できた。「原子力ムラの人々」、「原発と核兵器」、「原発ゼロで生きる方法」など、全7章のどこも緊張感にあふれた貴重な知見と対話と分析が続く。
特に福島第一原発事故を受け、朝日新聞の社説が「イエス・バット」の是々非々から脱原発に変わった(2011年7月13日一面「提言 原発ゼロ社会」)前後の経緯、石破茂・元防衛大臣、枝野幸男・元官房長官、中川秀直・元自民党幹事長、小泉純一郎・元首相、河野太郎・元外相らのインタビューや大事な引用と評価は読ませたー。
福島第一原発の汚染水、原子力業界の広報費、研究者と電力業界のつながり、有力議員のパーティ券購入、核抑止力、原発と核兵器禁止条約、核のゴミ、エネルギー欧州事情、プーチンのウクライナ戦争と原発攻撃、ドイツの脱原発、原発推進へ逆戻りの岸田政権などなどー。
過去と今の原発問題のポイントが焦点化されて提示されている。これらには初めて知る事情や見方もあり、何度も「なるほどー」と。青木さんが聞いたという研究者は100人以上、被災者を加えると数百人。30年間、聞いてきたその集大成だという。
何人かの印象的な、というか、驚くべきインタビューがあるが、とくに、軍事おたくで知られ、核武装論者とみられている石破元防衛相の対話がそのひとつ。あの石破氏が「原発ゼロ」を語る場面だ。こわもてと視られている彼は意外と冷静な姿勢であることを知った一場面だ。
ー原発が軍事的に守れるかという議論をすると、安全という神話を崩すから、しなかったのですか(青木)
石破「安全じゃない。ということがわかったじゃないですか。要は悩んでいる。というのが正しくて。悩んでいても、考えても、答えが出ない。原発ゼロにしたいです。平和な世の中をつくりたいです。その思いはなくしません」
それと青木さんも書いているが、「衝撃の一言」だったのは小泉元首相の発言だ。彼は首相を辞めてから脱原発の代表的な旗振り役になっているのは知られているとおり。そのやりとりの中での発言だ。
小泉「日本は54基稼働して、これからまた100基体制作ろうなんて考えていたけれども、到底、処分場なんて全部作れないと思った」
ー在職中はご自身はどのような説明を受けていたんですか(青木)
小泉「ゴミについては聞いていなかったよ」
ー処分場がないと説明がなかった?(青木)
小泉「当然あると思ったんだよ」
いやはや、この「衝撃の一言」にはびっくり。というか、読んでいてのけぞったというのか正確かー。原発体制にあったときの首相が核のゴミの処分場はすでにあるもんだと思っていたなんてー。
これらのやりとりもそうだが、第4章の「原子力ムラの人々」は、これだけでも一冊の本になるぐらいの豊かな内容だ。ともかく新書にしては、ぎっしりと情報と状況と知見が詰まった一冊であることは間違いない

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