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2024年3月 9日 (土)

かって一世を風靡した「邪宗門」という小説があった   原武史さんが「歴史のダイヤグラム」で紹介

「かつて一世を風靡しながら、いまやほぼ忘れられた小説がある」で始まるこのエッエイ。「おやー」と思って読んでいたら、かつて私も大ファンだった中国文学者、高橋和己の「邪宗門」についてだった。戦前の宗教弾圧を描いたこの小説、学生時代に熱心に読んだことは覚えているが、いまやあらすじを忘れていた。朝日新聞に連載の「歴史のダイヤグラム」で、記憶が少しづつ蘇ってきたが、細部はうつろ。確か本棚にあったはずなので、もう一度手に。そう思わせるエッセイだ。それにしても、高橋和己にしても、「邪宗門」にしても、数十年ぶりに出会う名前。ともかく懐かしさが先に立ってしまったが、それにしても、今一度、読み込む価値がある小説だと思う。

 

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(歴史のダイヤグラム)「邪宗門」に描かれた神部駅 原武史

 

写真・図版
「邪宗門」で知られる作家の高橋和巳 

 かつて一世を風靡(ふうび)しながらいまやほぼ忘れられた小説がある。中国文学者の高橋和巳が『朝日ジャーナル』の1965(昭和40)年1月3日号から66年5月29日号まで連載した「邪宗門」も、その一つといえるだろう。

 この小説は、「ひのもと救霊会」という教団の本部がある「神部(かんべ)」駅に、千葉潔という少年が降り立つ場面から始まる。「この町の近代産業は紡績工業だけだが、時折り、ホームシックにかかった女工が、無断で寮をぬけだしてこの駅の構内をさまようことがあった」

 神部、紡績工業、ひのもと救霊会。これら三つのキーワードから、神部は京都府の綾部を、紡績工業は綾部に工場があった郡是製絲(ぐんぜせいし)(現・グンゼ)を、そしてひのもと救霊会は綾部に本部があり、大正、昭和の2度にわたって弾圧された大本(おおもと)教団をモデルとしているのがわかる。

 千葉潔が神部にやって来たのは、亡き母が信仰していたひのもと救霊会の本部を訪れようとしたからだ。大本開祖の出口ナオの筆先を教典にした『大本神諭』天の巻には、「東京は元の薄野(すすきの)に成るぞよ。永久(ながう)は続かんぞよ」「てんしは綾部に守護が致してあるぞよ。あとは宜(よ)くなりて、綾部を都と致すぞよ」といった文章がある。原文では「薄野」と天皇を意味する「てんし」が伏せ字になっているが、出口ナオは東京に代わって綾部が「都」になることを予言していたのだ。

 現実の大本教団は35年の2度目の弾圧で壊滅的打撃を受けたが、「邪宗門」では成長して教主となった千葉潔が、敗戦直後にナオの予言を実行するかのごとく蜂起を企て、神部を国家から独立した解放区にしようとした。

 「警視庁は近畿各県の警察官数百人を動員して、神部に向わせた。だがその列車は長い登り坂のトンネルの中に立往生した。べつに列車が脱線したわけではない。暗闇の中を車輪の前に小砂をまきながら走るレールに、数百メートルにわたって、べったりとグリセリンが塗られてあったからだ。列車はずるずると煙のこもるトンネルの中を後退し、警官隊はトンネルの手前で立往生した」

 京都と綾部を結ぶ山陰本線のトンネルの描写だろう。解放区自体は「三日天下」で終わり、教団は壊滅して千葉も餓死するものの、西日本の地方都市を拠点として国家権力に反逆する教団の姿を力強く描いた「邪宗門」は、連載中から反響を呼び起こした。

 とりわけ学生運動に及ぼした影響は絶大だった。高橋自身、京都の大学で教えていたことが、小説に厚みを与えていた。私が大学院時代、研究のため大本本部に滞在したのも、「邪宗門」を読んだことが大きかった。(政治学者)

 

 

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