既視感を覚えた「こがね虫たちの夜」 五木寛之「作品集 1 」「蒼ざめた馬を見よ」から
「青春の門」や「親鸞」などで名高い五木寛之の読んでいなかった初期作品「こがね虫たちの夜」に、確かな既視感を覚えたのだった。「五木寛之作品集 蒼ざめた馬を見よ1」。初版は1972年10月5日とあるから、古書店で求めたのだろう。印象的な「こがね虫たちの夜」は1968年12月発表とか。作品としてはこの中にある「蒼ざめた馬を見よ」、「さらばモスクワ愚連隊」や「艶歌」などのほうが高いだろう。が、個人的な体験を重ね合わせると、「こがね虫」のほうが興味深い。美大生の紀子が友人に誘われてスナックのアルバイトを始めるところから始まるー。そこでの常連の貧乏学生3人の交遊を中心にした物語。学生運動が再び盛り上がる1960年代後期の政治的な空気を背景にした日々の中、ひとりは途中で病死する。そしてそれぞれの世界へ旅立つ。毎日が何が起きるかわからない生き生きしていた当時を中年にさしかかったスナックママの今、こう回想する。「いま、生きているのは、おまけ。本当のところはもう済んじゃっている」とつぶやく。なんとなくわからないではない感覚だが、年を重ねてみると、やや、ふむ?そうかな?ー少し感傷的すぎるのではないかとも。でも、そのシーンには既視感があるのでしたー。
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