勝ち負けが同じになったところでゲームセットー 『レヴィストロース講義ー現代世界と人類学ー』
かなり長く積読だったこの本、『レヴィストロース講義ー現代世界と人類学』(平凡社ライブラリー)。2005年初版。レヴィストロースが招かれて、1986年4月15日、16日、東京で3回の講演をした。その講演と質疑応答を収めている。最初は1988年に「サイマル出版会」が発行したようだ。それから17年後に平凡社が改めて発行している。そうか、考えたらこの講演からもう40年近くも経っているのかーと驚くことしきり。というのも、内容は今読んでも新鮮だからだ。レヴィストロースの有名な『野生の思考』『親族の基本構造』は、難しいのでいつも途中で挫折しているが、この講演は意外とすんなりと読むことができた。特に印象的だったのが、第二講「現代の三つの問題ー性・開発・神話的思考」の「未開人はなぜ開発を拒むのか」。その中にある事例だ。読んでいて、びっくりというか、「えー!、そんな発想もあるのか」と思ったので。以下にぜひ紹介したい、
私たちから見ると欠陥、あるいは欠如と見えるものも、彼らにとっては人と人との関係、人と自然の関係を考える独自のやり方なのかもしれないのです。一例をあげましょう。
ニューギニア内部に住む人びとが、宣教師からサッカーを教えられ、これに熱中しました。ところが、彼らのどちらかのチームが勝つことでゲームを終わらせるのではなく、双方の勝ち負けの数が同じになるまで、何試合も続けたというのです。彼らにとってゲームとは、私たちのように勝利者が決まったところで終わるものではなく、敗北者が生じないことが確実になったところで終わるものなのですー。
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