「アングラの女王」・浅川マキを思い出してー リズム感いっぱいの「オールドレインコート」
ふと、浅川マキを思い出してー。「アングラの女王」と呼ばれた浅川マキを知っているだろうか?
「客席にはストーブが欲しかったが、それでも、みんなゴザに座って酒を飲んだりしていた。一升瓶の15本はまたたく間に売り切れて、冷えが少しづつ会場を犯していくのがわかる。早く始めようよ、と、云う催促の声が荒い拍手に混じって控室にも聞えてきた。わたしは、きょうは大変だぞ、と思った。舞台に上がっていったとき、照明のわずかな光量がひどく暖かかった。『つのだ ひろ』。わたしが大きな声で紹介すると、彼は力強く登場した」(浅川マキ)
浅川マキが京大西部講堂で歌ったライブのCD「浅川マキライヴ 夜」の歌詞カードにある彼女自身の当夜の模様だ(もともとは1978年のレコード「浅川マキ・ライヴ・夜」)。
浅川マキの歌のいつくかは、自然に口をついて出たり、口笛を吹いたりしてしまうフレーズがある。そのひとつが「オールド レインコート」(日本語詩 浅川マキ 作曲R・Stewart)。歌の途中や最後に繰り返される「そうさ 人生甘くはないさ そうさ人生甘くはないぜ」というフレーズだ。
だが、途中から「それされあれば、なんとかなるさ」という、浅川マキらしい、開き直りの歌になっていく(そう、こういうところが私は彼女の歌が好きだったのかもいしれない。70年代中盤は「半年先」のことも、実際わからなかったからだ)
オールド レインコート
日本語詩 浅川マキ
おまえは かって
荒れ狂う川の激流に身震いしただろうか
そそぐように降る雨のなか
旅をしたことがあっただろうか
旅をしたことがあっただろうか
おまえはおいらのような男と
連れ立って雪の積もった墓場を
見たことがあっただろうか
そうさ 人生甘くはないさ
そうさ 人生甘くはないさ
だけど おいらはここまで来たのさ
古いレインコート肩に
どんなときでも これさえあれば
なにも怖れることはないさ
なにも怖れることはないさ
古いレインコートは あるのさ
おいらのこころのずっと奥に
どんなときでも これさえあれば
何も怖れることはないさ
何も怖れることはないさ
おまえはおいらのような男と
連れ立って雪の積もった墓場を
見たことがあっただろうか
そうさ 人生甘くはないさ
そうさ 人生甘くはないさ
そうさ 人生甘くはないぜ
そうさ 人生甘くはないぜ
「浅川マキさんの訃報に接した時、混沌としつつも面白かった時代の象徴が一つ記憶の彼方に消え去ってしまうようなやるせなさを感じました(中略)浅川マキさんの歌は、開き直りの退廃、理不尽な権力に対する必死な悲関与、誰を傷つけることを意図しない反逆、本来極めて常識的と認知されるべき非常識、あるいはそれらの勧め、そんな感じで僕は受け止めています」
抽象的な例えがうまい。というか、的確だと思う。言葉が生きている。そう思う彼女への惜別のことばだ。だれが書いたかと思ったら、「シクラメンのかほり」などで知られる小椋佳だった(『ちょつと長い関係のブルース 君は浅川マキを聴いたか』の「ちっちゃな時から・・・」から)。
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