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2025年8月23日 (土)

原爆投下を正当化するための「ポツダム宣言」  『この国の戦争』(河出新書)加藤陽子さん解説が素晴らしい

Photo_20250823230701 原爆投下を正当化するための「ポツダム宣言」 


「この国の戦争」の加藤陽子さんの解説が素晴らしい

 何カ所も「なるほどね」というところがあったが、特筆すべきは「ポツダム宣言」と「原発投下」の関係のくだりだ。日本を降伏に導くためのポツダム宣言が「米国、英国、中華民国」の三か国の名で発表されたのは、1945年(昭和20年)7月26日。この7月26日が原発投下との関係でいかなる重大な意味を持つのか、忘備録としても確認してみたい。いかに「浅学非才」であることかを自覚してしまうのだがー。なにしろ「そういうことだったのだね」、戦後80年の2025年夏だが、そのようにためいきをつく。
 『この国の戦争 太平洋戦争をどう読むか』(奥泉光×加藤陽子、河出新書、2022年6月30日初版)から。同書の主に加藤陽子さん(この発行段階では東京大学大学院教授)の「解説」によると、1945年7月17日から米英ソの3巨頭(トルーマン、チャーチル、スターリン)の会議が開催される。米国側が準備したポツダム宣言の草稿案を起草したのは、陸軍省作戦部のボーンスティール大佐であり、草案は国務省・陸軍省・海軍省から成る会議で何度も検討されていく。
 「よく知られているように」(私は知らなかったがー)、スティムソン陸軍長官からトルーマン大統領に示された草案段階では、「もしわれわれが現在の皇室の下での立憲君主制を排除しないと付け加えるとするならば、それは日本によって受け入れられる可能性を各段と増す」―、として、日本軍と日本国民にとって最重要と思われた天皇制の維持をほのめかしていた。日本側が受諾しやすいように意図されたこの一文は、最終的には削除されることになった。
 その理由と背景について。米側が原爆実験の成功を詳しく認識できたのは、1945年7月17日。一方、7月16日、ソ連側は日本から戦争終結の仲介要請があったことを英米に伝えている。英米とソ連は日本の降伏について、その利害をめぐって次第に緊張関係に立つようになった。その中の7月25日、原爆投下命令が陸軍戦略空軍司令官に下される。この日は7月26日に発令されたポツダム宣言の前日にあたっている。
 日ロ関係史・冷戦史が専門の長谷川毅氏は、「原爆投下の決定はポツダム宣言が発せられる以前になされており、むしろ、ポツダム宣言は原爆投下を正当化するために出された」との評価を下しているという。
「日本側の受諾を促がす条文が削除されていく過程、また米英ソ三か国によるポツダム宣言の発表を予測して会議に参加していたソ連を、英米が宣言から巧妙に排除していく過程(この過程をあとで知りたいー)を見ると、長谷川氏の評価、『原爆の使用を正当化するためには、この最後通牒は日本によって拒否されなければならなかった』との解釈は説得力を持って迫ってきます」
 歴史上、7月26日に全世界に発表されたポツダム宣言について、日本は「黙殺」する―。ポツダム宣言をすぐさま日本が受諾してしまえば、その前日に投下を決定した原爆は使えない。-となると、確かにポツダム宣言ははじめから「拒否」されることを前提に発表されたことになるー悪魔そのものである「原爆投下」が、実は「最優先事項」であったことを物語る(いやはや、スターリン主義による粛清の惨劇もそうだが、ポツダム宣言をめぐる恐ろしい政治の駆け引きだね、と思うことしきりだー)。
 日本では、国体・天皇制や武装解除、戦犯追及などをめぐる侃々諤々の内部論議が続く。なるほど、ポツダム宣言には「原爆」、「ソ連」、「天皇制」の三つの事柄についての言及がない。その点を終戦史を専門とする鈴木多門氏が指摘しているとある。結局、8月6日の広島原爆、8月9日の長崎原爆を経て、天皇の「聖断」により、8月14日に天皇の音声の録音盤がつくられ、8月15日の「玉音放送」へ(有名な映画「日本の一番長い日」が詳しい)

 

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