最終章「福島原発事故の衝撃」を連載形式で 「新版 原子力の社会史」(吉岡斉)から
「新版 原子力の社会史」(吉岡斉)から
1 福島原発事故の発生
2011年3月11日14時46分、宮城県男鹿半島の東南東130キロの海底約24キロメートルのを震源として、モーメント・マグネチュード9・0の巨大地震が発生し、東北地方を中心に甚大な被害をもたらした。この巨大地震のもたらした災害は、東日本大震災と通称されている。その際立った特徴は、世界の震災史上はじめて「原発震災」(原発が地震で損傷して大量の放射能が外部に放出され、それによって地震と原発事故との相乗効果による被害拡大がもたらせる事態)が発生したことである。
2007年の新潟中越沖地震でも、東京電力柏崎刈羽原発の7基の原子炉のすべてが大きな被害を受けたが、放射能による一般住民への被害はわずかであった。それが今回との大きな違いである。原発は他の発電所と比べて異質な破壊力を秘めており、それがひとたび開放されると他の発電所とは異質な被害をもたらすことが、改めて浮き彫りになった。
東日本大震災では、福島第一原発から26キロメートル北方にある東北電力原町火力発電所(電気出力100万キロワットの石炭火力2基を擁する)を地震動と津波が襲い、物理的には福島第一原発を凌駕する被害をおよぼした。津波の高さは福島第一の14メートルを上回る18メートルに達したという。それにより原町火力発電所は全電源喪失状態におちいったが、発電所外部に被害を及ぼすことはほとんどなかった。起動用の重油タンクが破壊され、重油が周囲に漏洩した程度であった。火力発電所は大災害に襲われても、発電所外部に被害をおよぼすことはほとんどないのである。しかし原子力発電所においては、火力発電所とは比較にならない安全対策が必要となる。
東北・関東地方の太平洋岸には、多くの原子力発電所が林立している。最北の青森県には東北電力東通1号機、宮城県には東北電力女川1~3号機、福島県には東京電力の福島第一の1~6号機および福島第2の1~4号機、茨城県には日本原子力発電(原電)東海第2の合計15基ある。
他に建設中が2基(電源開発大間、東京電料東通1号機)、建設準備中が5基(東北電力東通2号機、東北電力浪江・小高、東京電力東通2号機、東京電力福島第一の7~8号機)がある。まさに東北地方の太平洋沿岸、とりわけ宮城県から福島県にかけての一帯は、世界一の「原発銀座」である。これらに加えて周知のように青森県六ケ所村に核燃料サイクル諸施設の集中立地地点がある。
これらの原発が大震災により、地震・津波の被害を受けた。地震動により原発やその関連施設(とりわけ送配電システム)は大きな被害を受けたとみられる。それに追い打ちをかけるように津波が襲来し、事態を大きく悪化させた。強い地震動を受けると、原子炉には自動的に制御棒が挿入され核分裂反応は停止する。今回は原子炉停止はうまくいった。
しかし福島第一では(6号機の空冷ディーゼル発電機1基をのぞき)すべての電力供給が絶たれたため、原子炉冷却機能が停止した。原子炉を動かす電力は通常時は原子炉自身が生み出している。それが停止した場合には発電所の外部にある送電線(外部電源)からの電力供給に頼る。それも駄目な場合は非常用のディーゼル発電機を稼働させる(非常用内部電源)。福島第一原発ではそのすべてが絶たれたのである。
それにより東京電力福島第一原発は、同時多発的な炉心溶融事故を起こした。そこでは運転中だった1~3号機までの3基の原子炉がすべて冷却材喪失事故LOCAにおちいり、核燃料メルトダウン(溶融落下)を起こし、さらにメルトスルー(溶融貫通)に至ったと推定される。(続く)(富岡洋一郎)。

« 大戦起るこの日のために獄をたまわる 俳句も弾圧した治安維持法から101年 | トップページ | 「自分の日常から知識を編む」に惹かれ 新刊新書「人類学のつくり方」(橋爪太作) »
「脱原発」カテゴリの記事
- 次々と質疑が続いた「日光の会」自主講座 県政出前講座「栃木県における再エネの状況」(2026.08.01)
- 県政出前講座「栃木県における再エネの状況」 7月31日(金)14時~日光市民活動支援センター(2026.07.30)
- 7月31日(金)「県政出前講座」レジュメは計48枚 テーマ「栃木県における再エネの状況」(2026.07.29)
- 「NO NUKES NIKKO」 特注のTシャツでも脱原発をアピール(2026.07.25)
- 31日(金)栃木県政出前講座のレジュメは「40画面」 テーマ「栃木県における再エネの状況」 (2026.07.23)
« 大戦起るこの日のために獄をたまわる 俳句も弾圧した治安維持法から101年 | トップページ | 「自分の日常から知識を編む」に惹かれ 新刊新書「人類学のつくり方」(橋爪太作) »


コメント