「用心棒日月抄」もいいが、「よろずや平四郎活人剣」も とにかく面白さ抜群の藤沢周平時代小説
たまたま我が家の「藤沢周平全集」から抜き出して手にした「よろずや平四郎活人剣」-。全24篇・600頁弱のうち、まだ4篇ばかり読んだだけだが、これが抜群に面白い。『用心棒日月抄』の「青江又七郎」もさすがの時代小説だが、この『よとろずや平四郎活人剣』の「神名平四郎」も勝るとも劣らない。解説によると、又七郎シリーズの時代設定は元禄14年から元禄16年。赤穂浪士事件が組み合わさった物語だが、この平四郎の物語は水野忠邦が改革に乗り出し失脚した天保12年から天保14年の時代。幕末がひたひたと迫っており、高野長英事件がらみで展開していく。いずれも明日の米びつを心配しながら暮らす「裏店に暮らす食えない剣客」という設定だ。又七郎は用心棒稼業で、平四郎はもめごと仲裁業が日々のなりわい。当然、侍社会の暗闇と裏店の庶民たちという両方の世界を行き来することになる。江戸を背景にした藤沢周平の筆のさえもあり、ぐいぐいと引き込まれてしまう。やるべき作業があるのだが、それを少し休んでの「よろずや平四郎活人剣」の読書タイムだ。以下は確か文春文庫の上・下2分冊のネットの紹介だ。
よろずや平四郎活人剣
文藝春秋 藤沢周平
神名平四郎。知行千石の旗本の子弟、しかし実質は、祝福されざる冷や飯食い、妾腹の子である。思い屈し、実家を出奔、裏店に棲みついたまではよいのだが、ただちに日々のたつきに窮してしまう。思案の揚句、やがて平四郎は奇妙な看板を掲げる。…喧嘩五十文、口論二十文、とりもどし物百文、よろずもめごと仲裁つかまつり候。世に揉め事の種はつきぬとはいえ、依頼主のもち込む話は多彩を極める。中年夫婦の離縁話、勘当息子の連れ戻し、駆け落ち娘の探索等々。武家と違い、万事気侭な裏店にも、悲哀にみちた人生絵図がある。円熟期にあるこの作家の代表的連作シリーズ、愈々佳境。人の姿、世の姿の哀切な陰影を端正に写し出す話題作。
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