読書欄がある日曜日は書評に惹かれ 「生き延びるためのいいひと戦略」などー

【ご注文明細】
1.「いいひと」戦略/岡田斗司夫/マガジンハウス
2.移行期的混乱/平川克美/筑摩書房
3.現代社会再考/たばこ総合研究センター
4.政治的思考/杉田敦/岩波書店
5.冬の旅/辻原登/集英社
6.芸人の肖像/小沢昭一/筑摩書房
7.〈ひと〉の現象学/鷲田清一/筑摩書房

(磯山オサム君が「森の図書館」に寄贈してくれた童謡詩集『金子みすゞ』(小学館)
(私の好きな詩 童謡詩人、金子みすゞの「木」(『金子みすゞ』小学館)から)
「永遠の詩 シリーズ01」の『金子みすゞ』(小学館)を私の友人で、茨城の詩人、磯山オサム君が日光霧降高原「森の図書館」に寄贈してくれた。本日、奥方と一緒に砂時計家に立ち寄って。
「だれかに読ませたいあなたの大切な一冊の寄贈を」。森の図書館では、そう呼びかけている。それに応えてくれた。それも「3・11」後の今、改めて読まれるべき詩集を。さすがいい本を選んでくれるな、そう思ったことだった。
「幻の童謡詩人」と呼ばれた金子みすゞは、いまではもうすっかり国民詩人になった。「おさかな」「大漁」「木」「私と小鳥と鈴と」「蜂と神様」「明るい方へ」など、いずれも心に沁みこむ詩だ。それぞれに「私のみすゞさん」があることだろう。
その中でも今回は「さよなら」を。この本の表紙にもとりあげられているが、確かにいい詩だ。私も読んでいるつもりだったが、これまで読み飛ばしていたかもしれない。彼女を「再発見」した矢崎節夫さんの解説によると、声に出して読むと、見事に絵になって見えるという。「きょうの私にさよならをいう。一度きりの今日の私に」
ブログ「砂時計主義」を訪ねてきたあなた、あなたも声に出して読んでみてください。私もこのブログを書きながら、声に出して読んでみました。今、夏の夕闇が近づいてきたところなので、さらにその光景が浮かんできました。
さよなら
金子みすゞ
降りる子は海に
乗る子は山に。
船はさんばしに、
さんばしは船に。
鐘の音は鐘に、
けむりは町に
町は昼間に、
夕日は空に。
私もしましょ、
さよならしましょ。
きょうの私に
さよならしましょ。
(2001年「講談社出版文化賞絵本賞」「小学館児童出版文化賞」を受賞した大塚敦子さんの著書「さよなら エルマおばあさん」2000年8月・小学館)
(エルマおばあさんと著者の大塚敦子さん 「さよなら エルマおばあさん」から)
東京に暮らすフォトジャーナリスト、大塚敦子さんから霧降高原「森の図書館」宛てに著書2冊が贈られてきた。私は災害支援「チーム日光」の一員として、5月下旬に宮城県南三陸町歌津に行ってきた。その際、現地のボランティア拠点、RQ歌津センターでボランティア同士として会っている。
私はRQ歌津センターで「日光霧降高原森の図書館はだれかに読ませたい大切な一冊だけ寄贈を受けています。決してそれ以上の本は求めないのです」と、そこにいたボランティアたちに話した。それに大塚さんが会話に加わり、「どんな種類の本がいいのかしら。私は17冊、本を出していますがー」と。
「それなら、特別にもう一冊ぐらいは寄贈を受けましょうー」(と、もったいぶって?)。私は確か、それに近いことを伝えた覚えがある。2冊の本が贈られてきたのは、それからざっと3週間後だ。
(大塚さんが書いた「わたしの病院、犬がくるの」2009年11月・岩崎書店)
その一冊は「さようなら エルマおばあさん」。多発性骨髄種という血液のガンで85年の生涯を閉じたエルマおばあさんの物語だ。「あとがき」にあたる「エルマおばあさんからの『最後の贈りもの』」で取材の動機を記している。
「もう長く生きられない、ということを知らされたとき、私は、心から敬愛していたエルマおばあさんが、死を見つめながらどのように生きようとするのか、ぜひそばで見届けたいと思いました」
「そして、その最後の日々を写真で記録しておきたいと強く思い、おばあさんにおそるおそる頼んでみたところ、答えはこうでした。『あなたはわたしの孫なんだから、自由に写真を撮ってかまわないわよ。ただし、入れ歯を外した顔だけは撮らないでね』」
(大塚さんが著書2冊とともに「森の図書館」に送ってくれた文面)
エルマおばあさんとの出会いは1997年の夏。撮影を許された大塚さんは、おばあさんが死に近づいた最後の2カ月間、おばあさんの部屋に寝泊りし、介護者のひとりとして、おばあさんが亡くなるまで付き添った、とある。
「その結果、ひとりの人間が、私たちの生きるこの世界から、向こうの世界にどのように足を踏み入れていくものなのかを、ほんのすこしでも見ることができたのではないかと思います」と。
私もすぐに開いてみたが、確かに2001年「講談社出版文化賞絵本賞」「小学館児童出版文化賞」の両賞を受けるに値する良書だ。それと「わたしの病院、犬がくるの」も加えてくれた。同封された文面には「自分にとっての一番特別な著書を2冊お送りします」とあった。
(私が新たに買い求めた大塚さんの「モノとわかれる!生き方の整理整頓」岩波書店)
大塚さんは東京に暮らし、フォトジャーナリストとして、世界を飛び歩いている。私は日光霧降高原暮らし。それが大震災の災害支援の現地のキャンプ地でたまたま知り合い、「口約束」をすることになった。それに快く応じていただいた。これも災害支援が結ぶ縁というものだろう。
著書のプロフィールを見ると、大塚さんは国際紛争報道を経て、アメリカとヨーロッパを舞台に、人を生かす自然や動物との絆、死と向き合う人々の生き方などのテーマに取り組んでいるという。
RQ歌津センターで会った大塚さんは、いかにも凛として現代に生きる芯のある女性、といった雰囲気があった。<そんな彼女はほかにどんな本を書いているのだろうか>。ということで、彼女の著書のひとつ「モノとわかれる!生き方の整理整頓」(2005年5月 岩波書店)を買い求め、読み始めているところだ。
(今季も29日に開館した日光霧降高原「森の図書館」=29日、日光市所野)
日光霧降高原の広大な森の中にある霧降高原「森の図書館」(観光施設「霧降高原チロリン村」内)が29日、今季も開館した。今季もこれから晩秋まで開く(無料)。
開館時間は基本的に「チロリン村」が営業している午前9時から午後5時まで(火曜休館)。チロリン村内のお土産コーナー「ふくろう工房」か「カフェ・アウル」で、「森の図書館へ」と、スタッフに声をかけてくれれば、図書館のカギを渡してくれる(そこから図書館まで歩いて数分)。
(霧降高原チロリン村内の森の中にある小さな日光霧降高原「森の図書館」=29日)
(「森の図書館」に寄贈された絵本「はらぺこ あおむし」と「死に急ぐ奴らの街」)
蔵書は少ない。最初から多くの蔵書を求めてはいない。NPO法人「アースマザー」(事務局・東京)の協力を得て、開館させた「日光森と水の会」は「必要なのは何万冊という本ではい。その人が大きな共感を受けた大切な一冊だけでいいのです」と
「大切な一冊」を森の図書館のベランダや周辺の森で読むことで、それを寄贈した人とのつながりも生まれるのではないか、という思いがある。同時に、ふだんせわしい日々を送っている人たちにゆったりした時間が流れる森で、本を片手にのんびり過ごしてもらいたいとも思っている。図書館の近くにはツリーハウスもある。
「森の図書館」の館長でもある私、「砂時計」は、ともかく1000人の1000冊を寄贈してもらおうと考えている(できればこの3年間のうちに。何万冊といった蔵書は考えていない。保管するスペースもないが~)。「大切な一冊」が1000冊集まると、ひとつの量から質に転換すると思っているからだ。
(「森の図書館」近くに暮らす「くまさん」が29日寄贈してくれた開高健の「オーパ!」)
(「森の図書館」のベランダから眺めた周辺の森の様子=29日、日光市所野)
ごく最近、災害支援「チーム日光」で石巻泥バスターズに2度も参加した千葉県船橋市のカンクラさんがカラフルな絵本「はらぺこ あおむし」を、やはり「チーム日光」で日光市内のカミヤマさんが文庫本「死に急ぐ奴らの街」(火浦功)を寄贈してくれた。
開館初日のこの日、この二冊を書棚に収めようとしていたところ、図書館にごく近い「竿師熊」こと、くまさんが開高健のブラジル釣り紀行「オーパ!」(ブラジルの人たちが驚いたり、感嘆したりしたときに発する言葉だそうだ)などを寄贈してくれた。
今季の開館初日に三人から三冊の寄贈本。こいつは春から縁起がいい~。そんな初日でした。三人のみなさん、どうもありがとうございました。また、ブログをご覧の少数の読者のみなさん、霧降高原「森の図書館」に訪れる一方、「大切な一冊」の寄贈も、よろしくお願いいたします。送っていただく先は以下の通りです(寄贈する際は本の余白に寄贈日と住所、名前の署名をぜひ)。
〒321-1421 栃木県日光市所野1541の2546
霧降高原「森の図書館」館長 富岡洋一郎
日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | 4 | |||
5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 |
12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 |
19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 |
26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
最近のコメント