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考えるヒント

2024年7月 9日 (火)

がんとの付き合い、すでに14年   現役記者が連載「患者を生きる」をスタート

うーん、35年前からよく知る小泉信一さん(編集委員)がこの連載「患者を生きる」(朝日新聞)を始めたのだね(かつて小泉さんは根室、私は帯広、広い北海道のためともに協力し合う道東の記者でした)ー。ぜひきちんとん、5回だという連載を読ませてもらおう。初回を読むと、小泉さんはがんとつきあって14年ー(そんな長いつきあいをしていたとは、知りませんでした)、でも、よくその後も「フーテンの寅」の渥美清さんや山田監督はもちろん、小泉さんらしい、思わず読ませるいい記事をたくさん書いていたね。「いい記事だねー」と、読み終えてから、筆者は小泉さんだったのかー。ということは何度もあった。こんなケースはあとは岩手県(私は北上兼応援デスク)で一緒だった東野真和くん(当時はBB、450350926_10229676440593368_572973534406 今は編集委員)など、数少ないー。

2024年2月21日 (水)

巨大な壊れた観覧車で装飾されている警察署   「理不尽なSF」の世界に誘う諸星大二郎

 

大ファンである「諸星大二郎」の世界だが、どういうわけか?、このところさっぱり読んでいない。彼の世界にひたることはある種の「余裕」があることだー、そう思っているので、「これはややいかんね」と。で、大二郎さんの傑作短編「遠い国から」を振り返ることにー。
 「食事の時間」とか「夢みる機械」「地獄の戦士」など8篇から成る短編集だが、何度も振り返ってしまうのが、「遠い国から」。                                                  
 この宇宙の果ての国では、壊れた人形、穴のあいた水差しなど、街角はガラクタに満ちている。なにしろ、警察署の正面は巨大な壊れた観覧車で装飾されているのだ。そこを訪れた旅人から見たそうした土地の風景が描かれる。「この国では実用的な物や実際的な生活をする人間は軽蔑される」。わずか18頁。だが、印象は強烈だ。
 若い時にも見ているが、今、読んでも印象はさほど変わらない。この手の「理不尽なSF」にかけては、諸星大二郎のほかに知らない。いずれも今から32年以上前の作品なのだった(「あとがき」で初めて知ることに)。連合赤軍事件なども背景にあったという「猫パニック」などもあり、当時の世相もすべり込ませている。
 「孔子暗黒伝」「暗黒神話」などで知られる彼だが、私はこの手の乾いた皮肉っぽさや価値観の地滑りを誘うシルクロード的光景をほうふつさせる世界のほうが、どうも好きなのだー。1dscn3200 大友克洋の、ともかくも笑ってしまう「ハイウェイ・スター」とか「さよならにっぽん」など、バックパッカー的に、地上と地下の関係を、なんなく飛び越えてみせる手法、それと、どこかでつながっているのではないか、そう思うのだー

 

2015年4月24日 (金)

その結果はどこへ行き着いたか・・・ 社説余摘「指から漏れる・・・」

  きょう24日の朝日新聞でとくに印象に残った記事がこれだ。見出しだけでは何の話?ー。読み進めていくと、今の情況そのものにがっぷり四つの記事だった。以下に朝日デシタルからの全文を掲載(私朝日デジタル読者です、毎月1000円ー)。

 それにしても、「言論の自由は、あらゆる批判精神は・・・」。これをかみしめなければならない、その現況にあるのは確かだろう。それくらい、かなりまずい場面にいるということを胸にたたみこんでいかないとー。

目に映る話は大きくないかもしれない。けれど、その底流にこそ目を凝らしたい。  自民党がテレビ朝日とNHKの幹部を呼び出したこと。  福島瑞穂参院議員の「戦争法案」との国会発言に、自民党が修正を求めたこと。  7年前、89歳で亡くなった評論家、加藤周一の言葉を思い出す。  

 ――二・二六事件以後真珠湾までの東京。日常の生活に大きな変化はなかった。衣食は足り、電車は動き、六大学野球のリーグ戦もあった。  「その背景の見えないところで、どういう圧力や取引や『自己規制』が言論機関に作用していたかは、当時の私には知る由もなかった。しかし報道言論の表面にあらわれた変化、一見おだやかな、なしくずしの変化に、特定の方向のあることだけは、私にも見誤りようがなかった」  もちろん戦前と今は違う。  大日本帝国憲法が「法律の範囲内」でしか認めなかった言論の自由は今、日本国憲法によって保障されている。  戦争の宣伝に加担した戦時の放送への反省から、「放送の自律」を保障した放送法もある。  ただ、私たちの言論の自由は、私たち自身が勝ち得たとばかりは言えない。  

 「戦後の革命的な空気のなかで、上から与えられたもので、水が海綿をつたってゆくように下からのぼっていったものとはいい難い」  

1956年、当時の朝日新聞論説主幹、笠信太郎が記した言葉だ。  私たちの言論の自由に命を与えるには、報道機関も、政治権力も、細心の注意とたゆまぬ努力が欠かせない。  報道機関に求められるのは圧力に屈せず、事実に厳密な姿勢を貫くことだ。  権力に求められるのは「放送の自律」を踏み越えない自制であり、福島氏の発言について言えば異なる意見を尊重する態度だ。  そしてひとりひとりの国民には、報道機関と権力を厳しく見張っていただきたい。  異論や批判を排除せず、むしろ敬意を示す。そんな多様性ある社会こそが、健全な民主主義を育むことができる。  

「真珠湾まで」を振り返る加藤の言葉に返りたい。

 「言論の自由は、そしてあらゆる批判精神は、指の間から漏れる白砂のように、静かに、音もなく、しかし確実に、失われつつあったのである。その結果がどこへ行き着いたかは、いうまでもない」

 (えむらじゅんいちろう 政治社説担当)

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2014年12月10日 (水)

特別高等警察は怖いね~  開戦から2日間で683人も

毎日、「おやっ」と思えるいい記事に出会うが、きょうの10日はこれ。「封殺された反戦の声」。朝日新聞の9日夕刊の記事だ(私のところは、1日遅れで夕刊が入ってくるので。

なんといっても、開戦から2日で683人が拘束されたというところ。改正治安維持法でたくさんの人たちが逮捕・拘留されたことは知っているが、直後の拘束の情況は今ひとつ、ピンときていなかったので。

非常に「参考」になる企画ですー。

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開戦直後、2日間で683人拘束ー。

古書店経営の渡辺順三さんも(古書店、ひぇ~)。

冬の風景を詠んだ、その渡辺さん(東京・下北沢、1894~1972)の歌に対し、とっこう(特別高等警察)は、どのように取り調べたか。

対象になるその歌はー

「ある子供は 大きな柿の実を描いていて 枯枝の中に一つ、赤々と実を」

(さて?、これがどんな嫌疑になるのかと思って、読み進めるとー)

「赤い実は『弾圧されても共産党は健在だ』ということを暗示している」、s

こう決めつけたという。

保釈は43年3月(というと、41年12月9日から、1年と3ケ月も。

「特高は人がものをどう感じたかにまで踏み込んできた」、

と、渡辺さんは弟子に語ったという。

(朝日新聞9日夕刊、「開戦73年 抑圧 上」)

記事の「下」が楽しみだ~。

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2014年8月 3日 (日)

今市しっくりこない「『貧乏』のすすめ」 「欲望」のとらえ方に違和感がー 

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「貧乏」の堂々たる展開に期待したのだが、著者「ひろさちや」さんの唱えは、どうも「今市」だった。さまざまな先人の「教え」を例にしての記述が続くのだが、もぅ一歩のジャンプが欲しいところだ。

 

 それでも、何か所かは、「なるほど~」という知恵も。「論語」と「聖書」、「経済成長という病」と「正法眼蔵随聞記」、古典落語とソクラテス・・・と、東西の古典の知見は、それはそれで、「ほほう~」なのだ。  

 

 確かに、資本主義の限界を説き、原発継続の危険性を指摘し、グローバリズム批判も含めて、いちいち共感はするのだが、「もっと突っ込んでおくれよ~」といった場面が何度か。論旨はわかるが、切れ味がどうもーと、そんなた思いがするのは、なぜだろうか?。 

 彼の提起は「消費の抑制」=「欲望の抑制」=「資本主義社会を変える」という図式だが、どうも、しっくりこないのだ。  というのも、「たばこは不必要、酒は贅沢品、もっともよくないのは、パチンコです」と、ばっさり。

 

 私もパチンコは、今は!やってはいないが(時間もないのもありー~)、やりたい人はやっても、それはそれで構わないと思う(大損しなければ、あるいは、パチンコしか趣味がないといった場合以外ならー)。酒もたばこもそれなりの、いや(笑い)、酒もたばこは、かなりの立場だ。  

 

 だから、彼の言う「消費の抑制」ではなく、実際は「消費の仕方」や「消費の方法」であり、「欲望の抑制」ではなく、「欲望の方向」や「欲望の角度」の問題なのだと思う。何かを「抑制」するという発想が(結果的にそう、見えたとしても)、どうも、私の発想と違うのだ。

 

 「欲望」は「抑制」するとか、しないとか、そうしたレベルでは論じられない、そういう対象ではないのではないか。そこら辺りでこの本に対する違和感があるのかもしれないー~

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2014年7月24日 (木)

「SNIPPING TOOL」を知っていましたか 文章と写真をBLOGやFACEBOOKへ

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アプリの「SNIPPING TOOL」というツールを使う方法を知っていましたか?

A4版に文章と写真をつけて、「霧降文庫、27日再開」のチラシをつくったのはいいが~。

FACEBOOKに張り付けようとしたら、JPGなど4つの方法でしか受け付けない。

そのため、契約している「SOS」のリモートサポートセンターに問い合わしたら~

私が1時間も「あうでもないこうでもない」と格闘していたのが、あっと言う間に。

「パソコンのアプリのスニッピングツールで」。「文書と写真をそのままFACEBOOKに載せるには、この方法で」と。

ということで、私も、もう一度、「イベント」でやってみて成功しました。 いやはや、ネットの世界は、知らないことが多いこと~。

 このブログでも同じー。やはり、スニッピングをかけないと、掲載できなかったー。

いやはや、大変だことー。いろいろあるが、共通にできないかー。技術が進むと、こういうことはないだろうー。時間が問題だがー。手間暇がかかりすぎると思う。

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2014年6月25日 (水)

よりゆっくり、近く、曖昧に 好著「資本主義の終焉と歴史の危機」

 

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資本主義とは内在的に「過剰・飽満・過多」を有するシステムなのです

 

 

いやはや、最近になく、魅力的で確かな視点を提示している新書だ。新聞でも話題になっていたのに加え、「ともだち」のWさんから勧められたことで、一気に。読書灯でも読んだのは久しぶり。浜矩子さんの「新・国富論」などもなかなかだが、今一歩で、肩すかしをくってしまう。

 

それに比べ、この新書はさらに論旨が鮮明で、経済の数値や物価の歴史、西欧の盛衰もしっかり書き込んである。  

 

ほんとに面白いので、TWITTERで10回にわたって、ツィートしたのです(それほど反応はないが)。結論は「魅力的な視点がいっぱい」その⑩だがー。結局は、私たちなどがめざす「懐かしい未来」の発想と同じだった~。と、いうことがわかったのです。  

 

グローバリゼーションについての「中心」と「周辺」、サプライム・ローンと非正規労働者、9・11と3・11福島原発事故、西欧の終焉、ルターの革命とマルクスとケインズ、アブラハムのノアの方船が元祖だという「蒐集」という資本主義の宿命、「海の帝国」と「陸の帝国」の興亡。各章のそこここにさまざまに展開・刺激される指摘がいくつも。  

 

ということで、きょうの午後、twitterでつぶやいたことを以下に(①~⑩の順序は逆ですがー、それぞれ私が気に入ったフレーズです)。  新書にしては、内容が盛りだくさんの本です。

 

国家戦略室審議官をやっていたというから、「どうせー、同じような話が~」と思って、敬遠していたのですがー。いやいやどうして、ぐっと読ませます。というか、考えさせられますー。こんな論点の人はいるのだろうが、ここまできちっと小気味よく、説得力がある文章はなかなかおめにかかれない。

 

(以下はTWITTERに送った文章です)

 

 魅力的な視点がいっぱい⑩「資本主義の終焉と歴史の危機」(水野和夫)から(完)そのためには(定常状態を実現させるためには)「より速く、より遠くへ、より合理的に」という近代資本主義を駆動させてきた理念もまだ逆回転させ、「よりゆっくり、より近くへ、より曖昧に」と転じなければなりません

 

魅力的な視点がいっぱい⑨「資本主義の終焉と歴史の危機」(水野和夫)からー もはや地球上に「周辺」はなく、無理やり「周辺」を求めれば、中産階級を没落させ、民主主義の土壌を腐敗させることにしかならない資本主義は、静かに終末期に入ってもらうべきでしょう

 

魅力的な視点がいっぱい⑧「資本主義の終焉と歴史の危機」(水野和夫) リスクの高い新技術によって低価格の資源を生み出そうとした原子力発電も、3・11で、福島の人々の未来を奪っただけでなく、数万年後の未来まで放射能という災厄を残してしまいました

 

魅力的な視点がいっぱい⑦「資本主義の終焉と歴史の危機」(水野和夫) 利子は、神に帰属していた「時間」を人間が所有することを意味していました。その結果、たどり着くゼロ金利というのは、先進国12億人が神になることを意味します。「タイム・イズ・マネー」の時代が終焉を迎えるということです

 

魅力的な視点がいっぱい⑥「資本主義の終焉と歴史の危機」(水野和夫) なぜならバブルとは、資本主義の限界と矛盾とを覆い隠すために、引き起こされるものだからです

 

魅力的な視点がいっぱい⑤「資本主義の終焉と歴史の危機」(水野和夫)ー 『火山に恋して』でこのことを象徴的に描写しています。「偉大なコレクションとは膨大ということであって、完成しているということではない(中略)蒐集家が必要とするのはまさしく過剰、飽満、過多なのだ。

 

魅力的な視点がいっぱい④「資本主義の終焉と歴史の危機」(水野和夫) 資本主義とは内在的に「過剰・飽満・過多」を有するシステムなのです。スーザン・ソンタグが『火山に恋して』でこのことを象徴的に描写しています。「偉大なコレクションとは膨大ということであって

 

魅力的な視点がいっぱい③「資本主義の終焉と歴史の危機」(水野和夫)

巨大バブルの後始末は・・・「冨者と銀行には国家社会主義で臨むが、中間層と貧者には新自由主義で臨む」(ウルリッヒ・ベック『ユーロ消滅?』)ことになっていて、ダブル・スタンダードがまかり通っているのです

魅力的な視点がいっぱい②「資本主義の終焉と歴史の危機」(水野和夫)から EUで言えば、ギリシャやキプロスなのです。21世紀の新興国の台頭とアメリカのサプライム・ローン問題、ギリシャ危機、日本の非正規社員化問題はコインの裏と表なのです。

 

魅力的な視点がいっぱい①「資本主義の終焉と歴史の危機」(水野和夫・集英社新書)から 資本主義は「周辺」の存在が不可欠なのですから、途上国が成長し、新興国に転じれば、新たな「周辺」をつくる必要があります。それがアメリカでいえば、サプライム層であり、日本で言えば、非正規社員でありー・・・

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2014年6月23日 (月)

1カ月の電気代190円   40㌂から5㌂の断・電気宣言本

 1カ月の電気代190円・・・ひぇ~。。1900円ではなく、なんと・・・Dscn5100001


190円ー。そこに向かう動機がはっきりしている。「第二章 断・電気宣言から5アンペア契約」にある、やりとりだ。

 

「ぼく、あの原発事故のとき、福島にいたんです。福島県民だったんです。だから、もう電気はあまり使いたくないんです」

そこまで話したところで、彼が何度もうなずいた。大きく一度、二度。

「そうでしたか」

福島にいた。その一言で、なぜ5アンペアなのか、すべてを理解してくれたようだ。青年の顔に申し訳ないというような感情が浮かんだのを見て、ぼくはそれ以上力んで話すことは止めた。

「わかりました。5アンペアということで、契約を変えさせていただきます」

 

 40アンペアから5アンペアの契約へ、その際、ブレーカーの切り替え工事が必要だが、その工事を担当する東京電力の工事の男性と斎藤記者とのやりとりだ。私も彼の記事を読んで、とりあえず、30アンペア契約を20アンペアへ。その作業、10分ほど。あっという間だった。だが、5アンペアとなるとー。 次々と家電を手放す。炊飯器、冷蔵庫、電子レンジ、トースター、エアコン、たこ焼き器、魚焼きグリル・・・。それに対応して、ガス鍋ごはん、保冷庫、ほうき、扇風機、ゴザ、・・・。夜に冷蔵庫を切り、出掛けるときはブレーカーを切りと。そしてシェルターとしてのキャンプングカー購入、さらに自家発電所設立ー。その名も、わっはっはと、笑ってしまう、「健康第一電力」、略して「健電」(これは名前の健一郎からとったのだろう)。

 

それにしても頭が下がる挑戦だ。私も彼の朝日新聞記事に触発されて、断・電気宣言へ(以前はじゃぶじゃぶと使っていたのではあるがー)。もともとクーラー、掃除機はないが、テレビを廃棄、電気ポット、トースターは押入れへ。かなりをLEDに切り替えている。だが、まだ冷蔵庫、電子レンジは手放せないでいる。なので、月額190円は夢物語だ。それでも、この本を読んで冷蔵庫の使い方や炊飯器ではないごはんの炊き方などは、改めて学ばせてもらった。

 

もともと彼・斎藤健一郎記者の断・電気宣言生活の記事は社会の関心を呼んでいた。その記事を読んでいた私たち「原発いらない栃木の会」が、昨春の総会記念講演を彼に依頼。宇都宮で講演をしてもらったうえ、親しく懇親も(実は私の同僚記者でもあったのでー)。そのときは「健電設立計画」まで。その後の取り組みも含めて、〈いやはや、えらいね。私も少しは彼に近づいていかないとー〉。

 思わぬ難問に「はて?、どんなふうにしたら」と、立ち止まり、ひとつづづ乗り越えてゆく様子もほほ笑ましい。文章のタッチや視線の優しさはこの筆者の性格なのだろうー。脱原発のもうひとつの「方法」がここに。さまざまな工夫を提示する生活の知恵もそこここに。そのように読んだのでした。お薦め本です。

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2014年6月22日 (日)

この世で何が一番好きか?   「歳月」で「おいらも胸が・・・:」

(21日に引き続き、「歳月」からー。FACEBOOKにはアップしていたのでー)
 
「この世で何が一番好きかという李鉉相(パルチザン南部軍総司令官)の質問に、彼はしばらく考えてから、花が一番好きです、と答えた。
 
花か・・・。咲いているときはいいが、散ると空しくないですか? 李鉉相が質問すると、いい年した男が花が好きだというと笑われるのではないかと、そうでなくても顔が真っ赤になっていた彼はこの世のもんはみなそうだと思います、」
 
「花も人も動物も結局はみんないつか死んじまうんです。花が散るのを見るとなんだか胸がしめつけられるし、そしたらおいらも胸がじいんとするし、そいつもそうだし、そうなんですと、情けない答えをしてしまった。
                                                            Dscn5098
革命家らしくない発想だなあーー。そういう返事が返ってくるだろうと予想はしていたが、思いのほか批判めいた語調ではなかった。いつか解放の日がきたら・・・・」
これも韓国女性作家・鄭智我(チョン・ジア)「歳月」の中の一編「純情」から。
 
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2014年6月21日 (土)

これはいいね!韓国小説  老いをテーマ8編「歳月」

   韓国・鄭智我(チョン・ジア)の小説「歳月」。書評で気になり、ネットで購入ー、なにげなく読んでいたが、これがなかなかー、というより、これは今、日本で読まれるでのではと。短編8篇とも老いてゆくことがテーマだ。それも韓国の歴史を背景に。そこにひとつの、ほとんど「哲学」も。

 

ふだん、小説はめったに読まないのだが、こうした小説なら、読みたい、そう思ったことでした。彼女のほかの本もこれから読んでいこうー。この本をきっかけに、これから日本のファンが増えるではないかー。そう確信させるような名編ばかりだ。

 

以下の「いとうせいこう」の書評からも、読みたい人は読むことにになろうー。

老いに焦点、人間の必然描く  

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重力の強い文体と描写、人間の愚かさ純粋さへの透徹したまなざし、あるいは哀れみや共感によって、読む者を足元の土へと引きつけ続ける韓国女性作家の短編群である。
 解説によれば鄭智我は1990年両親を描いた『パルチザンの娘』を発表するが、国家保安法により発禁。自身逃亡生活をせざるを得ず、実際のデビューは6年後だという。
 この短編集にも麗水(ヨス)14連隊に所属して反乱を起こす男や、韓国が単独政府を樹立することへの反対闘争に身を投じた男女、つまり作家の両親に似た人間が出てくるが、しかし決して政治が前景にある小説にはならない。
 人が老いていくこと。8編はすべてそこにぴたりと焦点を合わせる。記憶のない母と2人だけで山に暮らす寡黙な男、ボケていく父を見つめる初老の男と母、あるいは出会った女の若さに心地よく翻弄(ほんろう)される中年女とさらに年を取った女からの視点など、自分と他人の老いをそれぞれの微妙な関係の中でがっちりと描きながら、悔恨と諦めとあきれ笑いで包み込むのだ。
 作家から日本の読者へのメッセージも末尾についていて、彼女に限らず多くの韓国人読者が日本作家の作品を受容していることがわかるが、反対のことも彼女を通して起きなければならないだろう。
 「限りなく軽快になっている今の時代に似合わない小説かもしれません」とも鄭智我は言葉を寄せている。確かにそこには日本で書きにくくなった近代小説の骨頂がある。書きにくさはどうやら韓国でも同様なのかもしれない。
 だが、この世に生まれてきてしまった者が、食べなければ命を保てず、どうあろうが育ち、働かざるを得ず、心は時に傷つき、やがて親や兄弟が老い、自分もまた年月に吹きさらされていくのは世界中のあらゆる人間の必然である。
 書かれなくなりつつある必然から目をそらさないこの作家の小説が我々には必要だ。
    ◇
 橋本智保訳、新幹社・1944円/チョン・ジア 65年生まれ。作家。著書『幸福』『春の光』など

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